第19話 修練所

瑠璃姫に教えられた修練所に向かうため森の中を進む。

するとすぐさま日本人形のような精霊が現れた。

「私が修練所の管理を任された、瀬利と申します」

身の丈10センチほどの人形のような精霊。

「こちらになります。ついて来て下さい」

空中に浮かび、飛んでいる瀬利を先頭に森の中を進む。

不意に何か膜のようなものを通り抜けた感覚がした。

すると目の前に広い空間が現れた。ここだけ樹々が無く、芝生が生えていた。

上を見上げると青空が見える。

「皆様、ここが修練所になります。広さは300m四方ございます」

「こんなに広いとは・・・」

良宣はせいぜい50m程度に考えていたが想像より遥かに広い。

「上空は空いていて空が見えますが、上空からですと森にしか見えません。この修練所は見えないようにできています。さらに森との境目には、森への攻撃をシャットアウトし森を破壊しないように結界が張られています」

「どの程度までなら大丈夫なの」

「以前の善一郎殿とリリーの戦いレベルであれば、森への攻撃は、森の木々に当たる寸前で結界の壁により無効化されます。試していただいて結構ですよ」

「では、遠慮なく試させてもらおうかね」

良宣の祖母沙織は修練所の中央まで進む。

「雷撃呪!」

森の木々めがけて雷撃呪を放つ。

黄色の閃光が森の木々向かって飛んで行く。

しかし、黄色の閃光は森の木々に当たる寸前で結界に防がれ、森には傷ひとつ付けることはなかった。

「ホ〜!これはすごいね」

「気に入ってもらえたようで良かったです」

小さな精霊がニッコリと微笑む

「ここは、悪きものを阻む強力な結界もありますから、新たな式神との契約の時に、悪きものを呼び出してしまうことはありませんし、式神との契約の邪魔も入りません」

精霊は良宣をほうに向くと

「良宣殿、早速試してみて下さい」

「エッ・・・まだ、式神契約について学んで無いですけど・・・」

「何を今更言ってるんですか、式神契約について学ぶとは、技術や力の無いものが安全に行うためのもの。高位の式神3体と既に契約している良宣殿は、無意識にそれを体得しているのですよ。下位の精霊などではできませんが、高位の精霊などであれば自分の意思で動けますから、新たな契約を行うときは必ず助けてくれますよ。まず、契約済みの式神を1体呼び出してごらんなさい」

瀬利の言葉に頷き

「へびつかい座の精霊アクレピウス」

すると、いつものようにシルバー髪でオールバックの髪型。黒の燕尾服を着たいつもの姿で現れた。

「お呼びでございますか」

「新たな式神契約を試すように言われてるんだけど・・・」

アクレピウスは、瀬利の方を向くと、精霊の瀬利はニッコリと微笑む。

その姿を見てアクレピウスは頷く。

「わかりました。問題ありません。良宣様は心を落ち着けて心の底から精霊に語りかけて下さい。自分と契約して欲しいと語りかければ大丈夫です」

良宣は、目をつぶり深呼吸を何度も繰り返す。

『精霊よ、僕と契約して僕に力を貸して下さい』

心の中で何度も呟く。

すると、体の奥底から熱い何かが湧き上がってくる。

「呼んでくれてありがとう!」

前から声がするので目を開けると、目の前に1mほど魚が空中に2匹浮かんでいる。

「・・・魚・・・いや、シャチだ・・・」

1体は黒一色のシャチ、もう1体は白一色のシャチ。

「「僕らは、魚座の精霊」」

「黒色の僕はアルレシャ。アルと呼んで」

「白色の僕はヴァンマーネ。ヴァンと呼んで」

「「僕らは2つで1つ」」

黒と白のシャチが光始める。

光が収まるとそこに身長1mほどの男の子が現れた。

「この姿の時は、ヴェリノスと呼んで!」

ヴェリノスは満面の笑みを浮かべ嬉しくて仕方がないといわんばかりだ。

「来てくれてありがとう。助けが必要なときは力を貸して」

ヴェリノスは頷くと

「呼ばれなくとも、必要ならばいつでも来るよ。気楽に気軽に呼んでくれていいよ。暇潰しの話し相手でも、修行の手助けでのかまわないから!」

ヴェリノスは、そう言うと元のシャチの姿になり、修練所内をしばらく飛び回ると帰っていった。

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