第17 話 魔女の履歴書
「異世界の魔女?・・・」
良宣の呟きにガレルが答える。
「・・そう。異世界から来たのよ・・・もう、どのくらい経ったのかしら・・・」
遠くを見つめるような目をする。
「時空の歪みに飲み込まれ、気がついたらこの世界に来ていたわ」
「どんな世界から来たんですか」
「来たときは文化的には大して違いが無かったけど、魔法技術の発達の度合いが違ったくらいかな」
「いったいいつから・・・」
「俺がお前の前世の頃に戦った時には、知る人ぞ知るといった存在だったぞ」
アスラの言葉に、良宣は計算すると1200歳を超えているということだよなと考えていると、何やら殺気を感じた。これ以上は危険だと思い考えることをやめた。
「それで、今日はなんのために呼んだ・・・それと、このアスラって奴はなんだい・・」
「そうね。まず、このアスラは私の執事として働いてもらうの、今は見習いかな?」
そこに、一人のメイド姿の女性が部屋に入って来た。
「皆様、紅茶とお菓子をお持ちしました」
メイド姿の女性とアスラは手早くお菓子を配り、紅茶を用意する。
「そういえば、この娘のことも紹介しないとだね。彼女の名はフレイヤ」
「ガレル様の元でメイドをしておりますフレイヤと申します」
フレイヤと名乗った女性はゆっくりと一礼した。背は160センチほどで黒い髪をしている。
「彼女は、吸血鬼。バンパイヤなんだ」
「エッ・・・」
驚き、沙織を見ると平然としている。
「知ってるの?・・」
「ああ・・フレイヤならよく知ってるよ。昔からガレルのところで身の回りの世話をしていたよ」
「心配は無用です。私は、血を吸うために人を襲ったりしませんから」
フレイヤは和かに微笑む。
「フレイヤは真祖の吸血鬼のひとり。ほとんど血はいらないし。多少は、陽の光にも耐性があるし、私の作った魔道具もあるから日中に普通に外を歩ける。普通の人と変わらない」
「ガレル様の魔道具には助かっています。肌を刺すような痛みが全くありません。本当に素晴らしいですわ」
フレイヤは右手にはめた緑色のリングを左手で触れた。
ガレルはその姿に満足したかのようにゆっくりと紅茶を飲んでいる。
「来月、私が理事長を務めるアリステリア学園で学園見学会がある。ぜひ、参加してほしいというお願いさ!」
「エッ・・・魔女で理事長なんですか・・・」
「ちなみに、校長はフレイヤだよ!」
「・・・メイドで校長???・・・・・一体なんの学園なんですか?」
「エッ!知らないの・・・うちの学園は割と有名なんだけどな・・・ハァ〜自信無くしそう」
ガックリと項垂れるガレル。
「では、校長である私フレイヤが説明致しましょう。私達が運営するアリステリア学園は、陰陽術と魔法を教える学校です。少数精鋭を基本として鍛え上げていきます。非常に人気が高く入学試験の競争倍率は約200倍。年によってはそれ以上となる狭き門です。海外からの入試受験者も多数おります。多数というか受験者の8割が海外からです。」
自信たっぷりに説明をするフレイヤ。それを聞き、ウンウンと頷くガレル。
「あの〜なんでそんなに海外から受験者が来るんですか?」
「それは、ガレル様の卓越した魔法を習いたいと希望する方が多いからですよ。教えるのは、ガレル様の弟子でもある私が直接指導した者たちです。つまりガレル様の孫弟子。陰陽師の講師は、沙織様のお弟子たちと陰陽師協会より数名派遣されています」
「フレイヤさんは魔法を使えるですか」
「ハイ、ガレル様よりガレル様が使える全ての魔法を教えていただきました。ですが一部まだコントロールに難があるものがりますが全て使えて問題ありません。ただ、学園で教えるのは、初級、中級まで。それ以上は人間性を見てとなります」
「人間性ですか・・・」
「そうです。勝手に自分の欲心で魔法を乱用されたり、多くの住民のいるところで強力な魔法を乱発されては困りますから」
「なるほど・・・」
「最も、その原因を作ったのは善一郎様なんですけどね」
「エッ・・・爺ちゃんですか」
「ハイ、元々この学園の卒業生です。才能の塊のような方でした。陰陽術に魔法の理論を組み込んで独自の術体系を作ってしまわれましたが、やらかし体質はその頃からですね。私やガレル様、沙織様に大変な迷惑をかけ続けてましたね。後始末が大変でした。今となってはいい思い出でした」
そう言って手を合わせる。
「・・イヤイヤ!・・・爺ちゃんはまだ生きてますから・・・」
「アッ・・・そうでしたね。失礼しました。では、戻られたら善一郎様に伝言しておいてください。また何かやらしたら残り少ない毛根を全て消滅させると!」
「・・・もしかして、最近森でやらかしたことを・・・」
「当然、知ってます。今回は、はいらずの地の主様が対応されるので見逃すことにしました。当然教え子ですからキッチリと指導は必要かと考えています」
「・・・・・」
「それより、良宣君はすごい式神を3体も契約されているとか、1体で良いです。この場で召喚してもらえますか?」
どうしたらいいかと沙織の方を見ると
「アクレピウスを呼びなさい」
「へびつかい座の精霊アクレピウス!」
光の玉が現れ、やがて人の姿となった。
「へびつかい座の精霊アクレピウス参上いたしました」
溢れ出てくる圧倒的な霊力に圧倒される一同。
「これは失礼しました。久しぶりのため、思わず霊力を発散させてしまいました」
アクレピウスが霊力を抑えると、やっと一同は息がつけた。
「これほどとは・・・・・」
「とんでもない霊力と格だね・・・」
ガレルとフレイヤは驚きを隠しきれなかった。
アスラは顔面蒼白状態。
「な・・なんなんだ・・・これは・・・」
「ふむ・・どうやら、私のへびつかい座の霊力に影響されているようですね。へびつかい座の霊力は、全ての蛇に支配力を行使できますが、どうやら竜体のものにも影響を与えるようですな」
「アクレピウス、今日はこれでいいよ。みんな納得したみたいだし」
「承知いたしました」
アクレピウスは消えた。
ガレルが立ち上がり
「・・よし・・決めた。良宣君は特待生として合格にします」
「エッ・・まだ試験もしてないですし、願書もまだですよ・・・」
「そんなんものどうでもいいよ。私がいいといったいいの!」
「そんなこと言っても・・・普通の高校で十分なんですけど・・・」
「良宣!諦めな・・・あの人は言い出したら聞かない。爺さんの師匠でもあるから爺さんのやらかし体質は師匠譲りさ」
「ご愁傷様です。良宣君、諦めてくだい。善一郎様の師匠ですよ。あれを上回るやらかし体質ですから、ウンというまでストーカーの如く付き纏いますよ」
この瞬間、学園生活が確定してしまった。
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