第10話 絆
いつからだろう、屋敷から一歩も出なくなり人目を怖がるようになったのわ。
顔と腕に人の顔のようなアザができ、そして、それがどんどんはっきりと大きくなってきた。
外に出るのが怖い。人の目が怖い。
このアザを見て人はなんと言うだろう。
きっと指を刺し、気持ち悪いとか気色悪いとか化物とか言われるに違いない。
お爺ちゃん、お父さん、お母さんはなんとか治そうとしてくれているが、全て上手くいかない。
どうやらこのアザは呪いらしい。
何か恨まれるようなことしたのかな。
どうしてこんな事になったんだろう。
もう、何をするのも億劫だ。体がとても重い。
アザをどうにかしようとすると、ものすごく痛くて苦しい。
もう放っておいていいよ。もう何もしてくれなくていいよ。
もう部屋にこもってじっとしていよう。
何やら騒がしい。誰か部屋に入ってきたみたい。
私を治そうとしてくれるみたい。
無駄だから何もしなくていいよ。
もう話すことも面倒。話しもしたくない。
周囲に急に三人の人のような気配が現れた。
急に強烈な光が私を包み込む。
同時に体の奥から何か引きずり出される感覚と猛烈な痛みが襲ってきた。
「ウウウウウッ・・」
痛くて言葉にならない。
もういいもうやめて。
急に痛みが引いてくる。そして、緑色の光が体を包み込んでくる。
緑色の光はどんどん強くなり、光の強さに比例して痛みも消えていき、やがて痛みは消えた。
体の奥底から何か重い何かが抜け出たようだ。
体がとても軽い。ふわふわして浮いているみたい。
幸せな気持ちに満たされると眠くなり、この気持ち良さに身を任せ、意識を手放した。
目を開けるとお爺ちゃん、両親がいた。
「痛くない、大丈夫」
お母さんが心配そうに聞いてきた。
体は何も違和感はない。気持ちいいくらだ。
そういえば、腕と顔の包帯が無い。
恐る恐る左腕を右手で触る。
アザがない。
左腕を見るとやはりアザがない。
今度は両手で顔を触れる。
手のひらで何度も何度も自分の顔を触る。
アザがない。
お父さんが鏡を持ってきた。
恐る恐る覗き込む。
映し出された顔にはアザがなかった。
自然に涙が溢れてきた。
お母さんがそっと抱きしめてくれた。
「よかったね、本当によかった・・・」
お母さんも泣いていた。
お父さんも泣いていた。
お爺ちゃんも泣いていた。
「アッ!私を治してくれた人は?」
「もう帰ったわ」
お母さんはそう言ってお爺ちゃんを見た。
「ワシの古くからの陰陽師仲間であり、友人でもある玖珂家の方に助けてもらった。特に、麗奈と同い年の良宣君によって助けてもらった。彼がいなければ麗奈は助からなかった。彼の活躍は素晴らしかっよ。陰陽師としての力量は同世代では抜きん出ている。時期を見て一緒にお礼に行こう」
「ハイ!」
自分を救ってくれた同い年で抜きん出た力量の人。
どんな人だろう。麗奈は良宣のことを考えていた。
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