第9話 呪い
「魔界の呪い?」
良宣の言葉に
「そうです。魔界の呪いです。一見すると人による呪いに見えますが、実態はまるで別物」
アクレピウスは、人面呪を睨みながら話を続ける。
「見た目がこの世界にあるちょっと珍しい呪いであり、関係する者たちからすれば全く聞いたこともない訳では無いため騙される。おそらく体内に小さな魔界からの門があり、実態はその奥隠れている魔界の者が、表面の呪いが祓われるとすぐ様小さな魔界の門を開け呪いを送り込む。この子を呪いから救うには、体から呪いを浮かび上がらせ一時的に封印、門の奥に潜むものを引き摺り出すと同時に門を完全に封印してから門を滅する。その後、呪いと奥に潜むものを滅する手順が必要になります。これしかありません。ですが、この子に大変な負担を強いることになり、場合によっては持たないかもしれません」
アクレピウスは道摩家の人々にどうするのかと暗黙に問いかける。
父親である流星は、しばらく目を瞑り、唇を噛み締めていた。やがて目を開け
「このままでは、麗奈は死んでしまいます。わずかな望みがあるのならそれにかけたい。お願いします」
流星と家族たちは一斉に頭を下げた。
「良宣様、かなり繊細な霊力操作になります。私一人では手に余る部分もございます。最近、契約されたお二方を呼びいただけますか」
婆ちゃんの『いつの間に、あと2体なんて。聞いてない・・・』と呟く声がしたが聞かなかったことにして、良宣は頷き、すぐ様式神召喚をこなう
「乙女座の精霊スピカ」
緩やかにウエーブがかかったブロンドの髪を背中まで伸ばし、白いドレスを着た女性が現れた。
続けて式神召喚を行う
「全ての明王の中心たる大元帥明王」
憤怒の相をして、6本の腕に武器を持ち、浅黒い肌の体に大蛇を巻きつけた大元帥明王が現れた。
精霊アクレピウス、精霊スピカ、大元帥明王は何も言わず、麗奈を中心に三角形を形作る位置に
それぞれ立った。
精霊スピカが乙女座の星々の名を呼ぶ
「ザヴィヤヴァ・・ポリマ・・デルタ・・イプシロン・・ゼータ・・ザニア・・シュルマ・・
ラムダ・・ファイ」
星々からの光がレイナを包み込む。
麗奈の顔と左腕にある人面呪が浮かび上がり光の球体に包まれる。
人面呪が浮かび上がると、麗奈の胸に2センチほどの黒い球体が微かに見えた。
すかさず、大元帥明王は黄金に輝く鎖を霊力で作り出し、黄金の鎖の端をつかむと鎖を麗奈の胸に見えた黒い球体に向かって投げ込む。
黒い球体に吸い込まれていく黄金の鎖。
やがて鎖は動きを止める。
大元帥明王は6本の腕で力一杯鎖を引っ張る。
鎖を引き寄せるにつれて麗奈の苦しそうな声が徐々に大きくなる。
大元帥明王に合わせ、アクレピウスは、引き摺り出される魔界のものが麗奈に与える影響を少しでも減らすべく、引き摺り出されようとする魔界のものと麗奈の間に結界を張ると同時に、アクレピウスは麗奈へ癒しの波動を送る。
引き摺り出された魔界のものを、精霊スピカが光の結界の中へ閉じ込めると同時に、魔界の門を封印。
結界の中に全身が黒一色のライオンの頭を持つ鷲がいた。
大元帥明王が宝剣と鉞斧を手にする。
すると、ライオンの頭を持つワシが声を上げた。
「クックク・・・見事、見事!よもやこのような事になるとわ。これほどの者たちが集まることは早々あるまい。せっかくだから挨拶をしておこうか!我は、ズー。魔界公爵なり」
「逃げらんぞ!すぐに滅してくれる!」
大元帥明王の低く重量感のある声が響き渡る。
「ハッハハハハ・・・好きにしたまえ。私の本体は魔界の奥深くにあるから、この体を滅せられても痛くもない。オヤッ!なかなか手早いな、この僅かな間に魔界の門を消滅させるとわ」
魔界公爵に向かいアクレピウス優雅に会釈した。
「仕事は速やかに素早くやるがモットーですので!」
良宣が声を上げる。
「なぜ、なんでこんなことをしたんだ。この子を苦しめたのはなぜだ!」
「フム・・・この場に偉大なる者達を呼び、従えしものよ。せっかくだ話してやろう。
それは、私が暇だからさ!」
「暇?暇で人を苦しめるのか」
「フフフフ・・私は飽きるほど時間がある。そして考えた。人間に依代を作り、その人間を贄に魔界の門を作り、そして魔界の門を完全開放してみたらどうだろうかと!贄にする人間は誰でも良かったんだが、やはり選ぶには色々条件があるのだ。彼女がその条件に当てはまっていたというだけなんだがね」
「・・・・・」
「今までの魔界の門は、ほんの一瞬だけ、一瞬の僅かな時間門を開けることしかできない。魔界の門を長時間、できたら常に開くことができたら素晴らしいと思わないかね!・・・君たちが来るのが、あと1日遅ければ全ては完成していた。実に残念だ」
大元帥明王が宝剣を魔界公爵に突き刺した。
「戯言はもういい。滅するがいい」
「おや・・、なかなかせっかち・・・・・で・・また・会お・・・・・」
魔界公爵は姿が崩れ落ちていき、何一つ残さず消滅した。
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