24. 味噌汁でむせた

一気に騒がしくなったリビングフロアで僕は上を向いた。なんだかやっぱり下を向いたら床を汚してしまうような気がして。


「どうした?虫でもいたか?」


リオを僕の視線を追うように上を向く。


「ううん。何でもない。」


そうこぼすように呟いて僕は席についた。ただ、さっきまで半泣きだった僕が食事中ずっとハラハラすることになるなんて全く思わなかった。兄貴にとっては地獄の時間だろう。


だって。


夢望さんが兄貴の大ファンだったなんて一ミリも知らなかったんだから。


––––––––〜☆〜––––––––


「いっただっきまーす!!」

「ほんと兄さんって食いしん坊だよなぁ。」


そう言って希が苦笑しながら手を合わせる。


ピロリン☆ピロリン


誰かの携帯が鳴った。


「誰ー?俺ミュートにしてるから違ぇよ。」


麗野がフォークに刺した肉を口の前に準備したままそう話す。


「僕もミュート。」

「僕は携帯を持ってないから……。」

「俺でもなかった。」


兄貴が尻のポケットから黄色の携帯を取り出し、確認した。


「ってことは……。」


皆の視線が一斉に彼女に向いた。そんな事は気にも留めず、彼女は半ば叫ぶように声を張り上げた。


「skyとfryの動画出てるっ!!!」

「う"っ!?……ンゴッホゲッホッ!」


飲んでいた味噌汁を吹き出しそうになって慌てて飲み込んだように見えた兄貴は気管支に入ったのか思いっきり咽せ込んだ。


「おお!」

「まぁじか!……んっ」


リオがご飯を飲み込んで満面の笑みを浮かべた。


「後で観ようぜ!!」


兄貴が凍りついたなんて僕以外誰も知らない。自分の出演している動画を同級生と一緒に目の前で見なくちゃいけないのだから。僕は上がる口角を味噌汁のお椀で飲みながら隠し、言った。


「たっのしみだなぁ!!!」

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