18. ダークマターだけは防ぎたい
僕は麗野と一緒に夕飯の準備をしていた。
「ちょ!希!それ砂糖多くないか?」
「そういう兄さんだって卵の殻!入ってるよ!」
麗野兄弟に調理を任せ、僕は二人を見守りながら、その他の雑用をやることにした。
「え!?あ、ほんとだ、入ってる……。」
割り箸でツンツンと殻を取ろうとつつく麗野がチラリとこちらに目線を向ける。
「あーあ。ウミが手伝ってくれたらな〜。」
「じゃあ『デザート』。要らないんだね?」
「うぐっ。」
この料理下手な二人をキッチンに立たせたのは全て僕の企てである。
––––––––〜☆〜––––––––
「「え〜!?」」
二人の大きな声が揃う。
「う、嘘だろ……?」
「海さん、夕飯作ってくれないの?」
二人のいかにも『絶望』という顔を見てほくそ笑む。
「誰が『作る』なんて言ったのかな?」
そう明後日の方向を向いて口を尖らせる僕。二人はどうしようかと顔を見合わせ、眉を下げている。
「てかさぁ、なんでお迎え専用ドライバーがいるのにコックはいない訳?」
「実は……庭の林檎を収穫しようとしてハシゴからドスンと、な。」
「今は骨折で療養中なんだよね……。」
希くんが苦笑いして、頬を掻きながらキッチンに置いてある赤白チェックの柄の布を捲り、バスケットの蓋を開けた。
「これが、コックさんの腕……いや、命をかけた林檎だよ。」
「うーん、じゃあ解った。君らが頑張ってくれたら、僕がそれで食後のアップルパイを作ってあげよう。」
二人の沈んだ顔がパッと明るくなる。
「「あっ、アップルパイ!?」」
「その代わり僕は手伝うだけだから。ね?」
––––––––〜☆〜––––––––
卵の殻に悪戦苦闘を強いられている麗野に、皿を運ぶ僕は意地の悪い笑みで言った。
「肉焦げるぞ〜。」
「えっ!?ちょっ!肉!焦げるな!?!?」
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