14. イケメンにも欠点はあります
「あの時は大変だったなぁ……。」
その時の事を思い出し、麗野兄弟が苦笑する。
そういや、日野の話全然してないや。
でも、本当はこれが正しいのかもしれない。僕たちが彼女の話に踏み込むことで、彼女の心の傷を抉るってしまうのならば、僕はこれ以上を望まない。
「そうだ!」
今思いついたのか希くんがポンと掌に拳を軽く打ち付けた。
「今日、うちの家に遊びに来ない?」
「えぇ!?」
慌てて聞き返す僕に麗野も賛成の声を重ねる。
「良いね!前回は姉さんに会えなかっただろ?近々会わせたいと思ってたんだ!」
「いや、でも……。」
僕は言葉を濁す。
「夕飯の準備とかあるだろうし……。」
「実は、今日母さんが居なくて、僕らが夕飯作らなきゃならないんだ。」
希くんがいかにもショボンとした顔で言うので僕は良心がズキズキと痛むのを感じた。
いやぁ、いくら麗野だからといって、僕なんかが家に上がり込んだら……そりゃあ、ねぇ。邪魔でしょ。迷惑になりかねない。気を使うだろうし。
「実は、俺、極度の料理音痴なんだ。」
麗野が表情筋を強ばらせながらそう言った。
「またまた〜。天才秀才麗野様にそんな欠点あるわけないじゃないっすか。」
お世辞なんだろうと笑いながら目の前にある麗野の太ももをペシペシと叩く。
「いや、マジだから。ガチだから。」
「え。」
そっと座席から吊り革を持っている麗野の顔を見上げる。
「ヒッ。」
そこには怨霊のように死んだ魚の目でこちらを見つめる親友の姿があった。
「い、行った方が良い……?」
「是非是非。」
狂気的な笑顔をこちらに向けた麗野。
もしや僕、今から料理にされます?今、食材調達中……???
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