13.顔面偏差値カンスト

「おぉ!のぞみ君!」


僕は突如現れた少年に明るく声をかけた。


「お、希!今日遅いな。委員会か?」


希くんは麗野の弟だ。


あ、どっちも麗野だから律央の弟って言った方がいいのか……?


「そうそう。なかなか決まらなくって……。そういや海さん久しぶりだね!この前遊びに来た以来じゃない?」


希くんが入ってくると途端にどんな場の雰囲気でも和やかになる。親近感があるのにも関わらず、全く失礼さを感じさせない巧みな話術に加えて麗野家の美人三姉弟の末っ子ということもあり、クラス屈指の顔面偏差値。小学生でありながらファンクラブがあり、そこには同じクラスはもちろん、他校の生徒も多く、加入者の年齢層も幅広いらしい。


「そういえばそうだね!背が伸びててビックリしちゃった。」


因みに僕や麗野が言っている「遊びに来た日」というのは約3年前の事……。


––––––––〜☆〜––––––––


その時は、実家から麗野達の従兄弟が1ヶ月の間泊まりに来ていた。本当か?と疑うような理由なのだが、バレンタインデーの1ヶ月前辺りから、彼らの家は三分に一回ぐらいの頻度でインターホンが鳴るらしい。


「ポストに入れてくれるならいいのに、わざわざ手渡ししてくれるから……。」

「えー。こっち意外と治安良いからポストに入れてくれるよ?」


そう苦笑いしながら話す従兄弟さんと麗野を交互に見つめた。


え?僕、手渡しはともかく、家に来たり、ポストにチョコ入ってた事なんてないっすよ?まぁ。でも……。


僕は従兄弟さんの顔を見た。


「ん?どうしたの?海くん。」


あっ…やべ、鼻血が……。イケボ×美麗×僕にまで声掛けてくれるレベルの優しさはダメっす。これは全人類が惚れる。


「な、なんでもないですっ。」

「そう?ならよかった。」


そう微笑む従兄弟さん、いや、従兄弟"様"。その後知ったのだが、実は彼は僕が知らないだけでテレビで大人気の俳優さんだった。


ガコンッ!


「な、何だぁ!?」


あまりにも大きな音に麗野が慌てて外に出る。その瞬間黄色い悲鳴と怒号、押し寄せる人の波。


「う、うわぁ!?ポストが!」


その声に従兄弟が顔をひょこりと顔を覗かせるとすかさず一眼レフのシャッター音が響く。


「ひぇー。」


僕が2階の窓から覗くと、特注の大きなポストが重さによってバキリと根本から折れていて、雪崩、もといチョコ崩により、玄関前の白いはずの砂利道がチョコの包み紙のピンクと茶色に染まっていた。


––––––––〜☆〜––––––––


結論として言えるのは、『麗野家は顔面偏差値カンストである』ということだ。

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