11. 恋バナはご遠慮ください

その息を追うように僕の顔はまた沈み込む。その事に気が付かない麗野は話し続けた。


「俺もそうなんだけどさ、響も友達が亡くなったから辛いんだろうな。」


実は麗野は彼女の幼馴染だ。小学校はもちろん、地元の中学、高校受験で高め合い、見事一緒にここに入学したという。


「まぁ、その辛さの分も"俺が"背負ってあげたいんだが……。」

「……。」


僕は何様なんだよ、と言いそうになった口を閉じた。奥歯を噛み締め、小さく落ち着け、と繰り返す。しかし、心はもう暴走して止められなかった。


なんなんだろう。この気持ち。僕は亡くなった人が誰なのかも知らない。でも、麗野には背負える、そんな事がなんだか無性に悔しい。


完全な八つ当たりだと解っている。麗野は彼女から信頼されているし、辛さを背負う事だって容易なのかもしれない。でも……。


「僕も……力になりたいんだ。」


喉に詰まっていた言葉が刺さった小骨のようにポロッと取れた。慌てて弁解しようとする僕より先に麗野は言った。


「あのさぁ……。ウミって、響の事。好きなの?」

「は?」


思いもよらない言葉に僕は目の前で微笑する相手を二度見する。


「えっと……は?」


そんな様子の僕を置いていくように麗野は追い討ちをかけた。


「そーかそーか!近頃元気がなかったのはそういう事だったんだね☆」


バチコーンと指を鉄砲のようにして僕を撃ち、ウインクまで決める麗野を横目で見ながら僕は考えた。


そういや考えたこと無かったな……てか。


僕はニヤリと笑う。


「いや、日野の事、好きなのは麗野だろ?」

「っ!?ゲホッゲホッ!」


お茶を飲んでいた麗野はむせて僕の方を向いた。


「図星〜?」

「な、なに言ってんのウミ!?」

「見てたら解るよ?本当の事言ってよ〜リ・オ・君☆」


先程とは逆に僕がウインクを決めようとしたが、不慣れなせいで両目を瞑ってしまった。が、それはいいんだ。麗野はそれに気が付かない程ダメージを喰らっている。


「急に下の名前で呼ぶなよ!?気持ちわるっ!」


僕は意地の悪い笑みでニコニコと笑った。


にこり


「……。」


にこにこ


「ったく。しょうがないな。あっ……当たりだよ。」


麗野は耳まで真っ赤にした顔を背け、小さな声で言った。


チッ。イケメンの癖に可愛いなんて反則すぎるぜ。

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