10. ご愁傷様です
––––––––〜☆〜––––––––
『友達のお葬式だったんだ。』
彼女の返信はとてもシンプルで全くもって飾りっ気が無かった。それなのに膨大な、僕たちには受け止められない程の厚みがあって。その一言は僕たちを黙らせる衝撃を与えるには十分過ぎた。
『ご愁傷様です』
何秒か経って一人のクラスメイトのメッセージが表示された。次々と表示される同じ文字。時折『ごめん』と謝る言葉が妙に虚しく、便乗したくなる僕の心を押さえつけた。
次の日、彼女は学校に来た。いつもより明るく、楽しそうな声にクラスメイトは安心したように話す。時折聞こえてくる笑い声に顔を向けると彼女の顔が視界に入った。
「っ……!?」
その表情のあまりの痛々しさに僕は息を呑み、顔を背けた。
何故。どうして他の人は気がつかないのだろうか。それとも……気が付かないふりをしているだけなのか。
––––––––〜☆〜––––––––
帰りの電車の中、僕はずっと上の空だった。
「ミ……。ウミッ!」
気がつかず顔を上げた僕と麗野の端正な顔がぶつかりそうになる。
「ひゃ……!?」
慌てる僕に麗野が眉を下げ、心配そうに言った。
「大丈夫か?四回も呼んだんだぞ?顔色も心なしか悪いし……。」
「い、いや、ごめん。大丈夫だから、近っ……」
困ったような顔も麗しゅうございます、麗野だけに……じゃなかった。
作り笑いで誤魔化して、距離の近い麗野の体を押し返す。
「そういや今日、響も同じ顔してたな。」
そう言って麗野は眉を下げたままにこりと作り笑いをして、自身の顔を指さした。
麗野も見てたのかよ……。
身体が凍りついた気がした。心の中での想いは声にならず、小さな溜息となって足元に落ちた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます