06. 消えた画面と半回転
電車内は静かだった。僕も、いつもならよく喋る彼女も、口を開かず、窓ガラスにあたる雨音がポツポツと不定期にリズムを刻む。設定されたであろう機械的な女性の声だけが空いた電車にアナウンスを流していた。僕も彼女もスマホを眺め、時折、大学生と思しき男性や、会社帰りといった女性がキュッという音を立てながら目の前を通る足音だけが妙にうるさく感じられた。
「ごめ……ね……」
彼女が突如呟いた。僕はゆっくりと彼女の方を向く。
––––ポタッ–––––––
僕は時間が経って消えた彼女のスマホの画面上を見つめた。
涙……?
「次はー
アナウンスが彼女の降車駅の名を告げる。僕はまだ固まったままだった。
な、泣いている……?何かするんだ。声をかけてあげるんだ。
そうは思っているにも関わらず、僕の口は動かない。
「まもなくー南末岡ー左側の扉が開きますーご注意ください。」
電車がゆっくりと速度を落としていく。彼女はスマホをリュックに滑り込ませ、重そうに持ち上げた。顔を見せないようにそそくさと乗車口を跨ぐと、黄色い点字ブロックで半回転。僕がそちらを見ていたことがバレたのだろうか。彼女は僕の方を見て、らしからぬ上品さで手を振っていた。彼女の目元が赤かったのはおそらく気のせいではない、動かない体を置いてぼんやりとそんなことを思った。
––––––––––––––––
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