03. 可愛い?
彼女はグループの人々と話をしていた。見るからに今入った感じじゃない。
あー。はいはい。そうですか。僕との話がつまらなかったんすね。
笑いながら話す彼女の姿を見て、そう確信する。僕は昔から愛想の無い子だと言われていた。兄弟で居るといつも兄の方が人気で、僕はその後ろをついていくだけだった。
「……!」
すると、彼女は僕が見ていることに気が付いたのかこちら側に手を振ってきた。反射的に手を振りかえそうとしてハッとする。
おーい…じゃ無いんだよ!おいおい!ダメだろ!何やってんだよ!間違えて僕が手を振ってたらどうするつもりだったんだよ!まるで仲が良いみたいじゃないか!こんな陰キャと仲良いなんて勘違いされたら、一年間地獄だよ!?
「ふぅ……。」
一旦落ち着こう。まだ彼女が僕に手を振っているなんて確信はない。ただの自意識過剰で、後ろに彼女に似合うキラキラ系のお友達がいるんじゃないか?さっきは悔しくもダメだったが、今回はいけるかも知れない。
くるりと後ろを振り向くが、やはりそこには誰もいない。やはりか、とため息をつきながら首を元に戻すと、目の前に彼女がいた。
「うぉ、えぇ!?」
彼女は机一つ分程の近さから笑顔で手をこまねいている。
まさかこっちに来いってことか……?
僕は考える。手を引っ張ったりしないってことは僕の意見は多少尊重してくれるってことなのか否か。僕の心は二つに分かれ、囁いてきた。
『行けばいいじゃん。これでぼっち生活から抜け出せるよ?』
『どうせ陰キャを笑いたいだけなんだよ。優しいフリして実は裏でバカにするのさ!』
しかし、勝負は彼女の表情によって一瞬で決着がついた。彼女はニコニコと笑っていたのだ。そう。あの意地の悪い笑みでニコニコと……。僕は立ち上がった。イスと机がガタリッと音を立てる。
「だから!違いますって!!」
しかし、彼女は真っ赤になった僕の訴えを無視し、寄ってきていたグループの人々に僕の事を紹介し始めた。
「こちら、
な、何なんだ?見た通り陰キャだって言いたいのか……。
「滅茶苦茶可愛いから気をつけて。」
ん?誰の紹介してるわけ?僕の名前が聞こえた気がするよ?あと、あなたの隣にいるツインテの少女が可愛い。
またもや僕は周りをきょろきょろと見渡す。先程も言った通り、可愛いなどと言われるのはいつも人気の高い兄の方だった。
おいおい、正気か?僕以外に紹介している人が居るんだったら早めに言ってくれ。
頭痛がした。その頭をふわりとしなやかな手で撫でられ、僕は目を白黒させる。
「ふぇ!?」
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