02. 濃い筆跡
知っていたさ。僕のような気持ち悪い陰キャにだな。誰も近づいてくるわけが無いんだよ。特に、あんなキラキラしたような女子は絶対に。
「え、それガチ?」
その一言で教室の大半がワッと盛り上がった。
あーうるさい。どうせまたあのグループなんだろ?
ガリガリと怒りに任せて強い筆圧、濃い筆跡で数学を解く。間違いに気がついて消しゴムでガシガシと消えない跡を消していると、フッと白いノートに影が降りた。
「字濃くね?」
ヒュッと息を吸い込む。顔をあげてみるとそこには僕とは対照的な美形の青年がこちらを覗き込んでいた。窓からの光に照らされ、色素の薄い髪が脱色したかのように茶色に輝いている。
よ、陽キャだー……。一応中学一緒なのにしばらく会わなかっただけでこんなにリア充臭くなるなんて……。
「おはよう。渡瀬君。」
「おはよう、ゴザイマス……
「麗野でいいよ?あ、
名前覚えてくれてるなんて嬉しい、そう言う麗野を横目に僕は消えかけのノートを指さした。
「あ、えっと、字。ま、間違えて濃く書いちゃって……。」
「間違えて濃くなるってあるー?」
そう言って彼は軽く笑う。
これがいわゆる「王子様スマイル」なのか?やめてくれ、陰キャの僕にそんな笑顔を向けられたら日光を浴びたヴァンパイアのように塵となって消えてしまうんだから。
「じゃあ、また後で。」
「あっと……その、また……ね。」
麗野は僕の言葉を最後まで聞き、小さく頷いた後、僕の元を離れていった。
ひょえ〜。ガチでイケメン王子様だった……。僕の話も最後まで聞いてくれたし、あんなん女子が引っ張りだこだろうに…。
そのまま彼の姿を目で追って驚愕した。彼は例のグループの人々に手を振り、自分の席につく。僕はその中の女子の1人に目が釘付けになった。
彼女が、あのグループに入っている。
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