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 龍神さまは、水をつかさどる神様だ。


 ―――マンガで得た知識だけど……。


 そして、アイヌは自然現象をカムイとして扱っていた。

 アイヌの時代に龍神さまが居たのかは謎だけど、いくらなんでも偶然がすぎる。


 私は、レジュメの空いたスペースにメモを取り始める。


 アイヌに鳥居を建てる文化はない。

 祠と鳥居ができるとしたら

 明治、大正、昭和あたり?


 それに、津波といったら、私自身も未曾有みぞうの大震災を経験したことがある。


 ――――小学6年の3月だった。


 東北の被害ばかりが有名になっているけど、釧路もそれなりの被害を受けた。


 海水が川の方に逆流し、河口付近に停まっていた漁船が揺れ、川が氾濫はんらんし、フィッシャーマンズワーフが浸水した。


 私は、メモを取る手をまだ止めない。


 釧路は、過去にも水害が起こっている。

 もし、全ての水害が偶然じゃないとしたら?

 春採の龍神さまがそれなりに力を持っている神様だとしたら?


 そう遠くない未来に、釧路があの日の東北と同じ被害を受けることになったら―――――


 廊下に響く笑い声と、幼保科ようほかの明るいピアノの音で我に返る。


 レジュメは、白いところを探す方が難しいほどに真っ黒だった。

 講義が終わっても、私はその場を動けずにいた。


 ただただ恐ろしいと思った。


 私たちは、あの龍神さまを怒らせてはいけないのかもしれない。


 ―――次は、そんなもんじゃ済ませないからな?


 私の耳元で、何かがささやいた。


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