宇海

3


 この祠を見つけたのは1ヶ月前。


 中学校の部活の課題スケッチのために、春採湖の周辺をうろついていた時だった。


 ――――ポンプ場の方に小道がびている。


 なんだか物語の始まりのような雰囲気に胸が踊る。

 小道を辿ると、少し開けた場所に着いた。

 見上げて見てみると、鳥居と祠がそこにはあった。


 ――――まるで、物語みたいじゃないか。


 翌日、私はクラスの友達である夕夏ゆうかちゃんに祠のことを話した。


 夕夏ちゃんは「ああ、龍神さまの祠のこと?知ってたわ。」と素っ気なく言う。


「龍神さま?すごい。あの湖に棲んでいるの?」目を輝かせながら身を乗り出す私に夕夏ちゃんは「そうなんじゃない?」と返す。


 そして、夕夏ちゃんは手を顎の方に組んで

「あたしは、あまり信じないけど――」と前置きしてから「龍神さまは本当にいるらしいよ。」と私の目をまっすぐ見て言った。


「昔のね、市長さんが見たって。」

 夕夏ちゃんが真剣な顔で言ってから、私は思い切り机をバンッと叩いて

「それ、ホント?」と叫ぶと

「だから、あたしは信じてないんだってば。」夕夏ちゃんは呆れた顔を浮かべて言う。


 そして、真剣な表情に戻してから話を始める。







  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る