ゆきと猫達

 いつものように裏口を開けて店の中に入る。時間は午前8時、まずは掃き掃除から。次はテーブルと椅子の掃除、それが終わるころ合いに裏口がコンコンとノックされる。

「開いてますよ~」

 そう声をかけるとノブが回り、女性が入ってくる。

「ゆきちゃんおはよう、今日もよろしくね」

 そう言いつつ手に持ったゲージの扉を開けた。中からチャロがひょこっと飛び出し、伸びをしながら2階に上がっていく。2階はトイレと水飲み用の機械が設置されている。その後も次々と従業員の猫達を連れて飼い主たちがやってくる。扉を開けた後にチャロのように一目散に2階に駆け上がる子もいれば、ゆきに甘える子もいる。十人十色という言葉があるように猫も一人一人やることが違うのだ。

 10時に、

「はい、今日の看板猫のキーくん!ブレンドを選ぶのです!」

 今日の看板猫はキー、ベンガルの比較的小柄な子だ。キーは首を傾げ、20分かけて3種類選んだ。その3種類をゆきはブレンドして一つの袋にする。作業が終わるころには11時前になった。

「2階のみんな! 開けるよ~」

 複数の返事が聞こえトタトタと2階にいた猫達が下りてくる。従業員のカウントをして正面入り口のカギを開け、看板猫が乗る用の机を出す。開店直後からお昼休憩に常連客が入ってくる。

「今日のコーヒー1つ」

「コーヒーとパンケーキ」

「今日のブレンドカフェオレとパンケーキとコーヒー」

 次々と注文が入りカウンターの向こう側は忙しくなる。猫達も接客に大忙しだ。午後8時には客足も途絶え、猫達のお迎えが来る。

「今日もお疲れ様でした」

「いつもありがとうございます。それじゃあこれで」

 と言ってキーの飼い主は踵を返し裏口から出ていく。閉店後の掃き掃除をゆきは始める。1階が終わったら2階に上がり、2階の掃き掃除もする。それと給水機の水を捨てて、新しいものに入れ替える。そして猫達の休憩用に置いてあるクッションをもって更衣室で私服に着替え、新しいクッションに変える。週に1回はこうしてクッションは入れ替えをしている。最後に正面ドアの施錠確認をしてようやくカフェの1日が終わる。裏口も施錠して終バスで帰る。作業が終わるころには11時になっているのでバスの本数はほぼない。これで家に帰りお風呂に入って作り置きの夕飯をレンジで温めて食べる。そそくさと片づけをして布団にもぐり目を閉じる。深い眠りへとふかふかの布団がいざない、次に聞こえてきたのは目覚まし時計のけたたましい音、時計を止めて着替えてバスに乗り、カフェの近場にあるコンビニで朝ご飯を買い裏口のカギを開けて椅子に座り朝食をとる。こうしてカフェの1日は回っていく。

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