第3話

正面玄関から校舎に入る。

いろんなことが謎だ。なんであんなのがいて俺を襲って来たのか。なんで武器を持っているのか。なんで来る間に誰もいなかったのか。なんでアレを紫音が瞬殺できたのか。

なんで学校は安全と言ったのか‥‥。

ヘックシュン!くしゃみが出た。そう言えば大雨の中を傘無しで走って移動してたんだ。ずぶ濡れになってんだった。さっき襲われて死にかけた恐怖のせいかすっかり頭から抜け落ちていた。

「そういや着替えないとだよな。着替え取ってくるから先俺の部屋の2年3組に入っててくれ。教室にヒーターあるからそこで温まってろ。」紫音はそう言うと、教室のある校舎の南棟とは逆方向の北棟に走って行った。俺は言われた通り、教室に進んだ。


本田紫音。小学校高学年の頃までは普通にいいやつだった。クラスの誰とでも話せ、クラスの中心にいた。女子とも普通に遊んでて、この頃でも彼女はいたらしい。クラスで嫌われまくりの僕とも普通に話していたし、僕もそれなりに仲が良かった奴だ。僕をサッカーに誘ったのも紫音である。(その頃、少し前のドッジボール大会でチームに暴言を吐いたおかげで、周りの誰もが僕にチームスポーツは無理と思っていた)その影響もあって、小学校を卒業する少し前にサッカーを始めて、中学校では2人とも同じクラスになり、同じサッカー部に入った。だがその後、紫音は変わってしまった‥‥。


教室に入ると、本当にヒーターがあったのでスイッチを入れて温まることにした。教室には誰もいなかったので、教室内をいろいろ見て回ることもできたが、寒すぎてそんな気にはならなかった。というかさっき大体何があるかは見たしな〜。

そうしていると紫音が着替えを持って来てくれて、教室のドアの前に置いてくれた。着替え終わったら呼べと言って教室のドアを閉めた。ベージュ色のテーパードパンツと黒のパーカー。下着も紫音曰く「新品」を用意してくれた。着替え終わったことを伝えると、どこから言えばいいかと聞いてきた。何も知らない僕は全部と答えるほかなかった。すると、紫音は話しだした。

「お前を襲ってきたアレは、モンスター。今この市内はモンスターが大量発生して俺たちは奴らと戦ってる。

「は?って顔してるとこ悪いんだが、とりあえず俺の話を聞いてくれ。

「今この市内には警察も消防も自衛隊もいない。大人は1人もいない。

「いるのは俺らと同年代の奴ら、と俺たちを襲って喰おうとするモンスターだけだ。俺や仲間の知る限りは。

「んなこと知らねーよ、なんで俺たちを襲うのかなんて。聞かれてもわかんねーよ。

「後質問はしないでくれ。後でまとめて答えるから。

「さっきも言ったがモンスターは俺たちを主食にしている。で、それと戦えそうな大人はいない。

「でも俺たちは死にたくない。死ぬのは嫌だ。当然だろ?

「だから俺たちは自分達の身を自分たちで守ることにした。いやそうせざるをえなかった。

「どうやって武器を手に入れた?それは追々話す。今は後回しにしてくれ。

「後質問はするなって言ったよな。ワンペナな。

「いや、そんな苛ついた顔すんなよ。後でちゃんと質問には答えるからさ。そんな顔されてると話しづらいしさ。

「俺たちは元々身体能力は高かったからな。そして、体内に不思議なエネルギー–俺たちは魔力と呼んでいるが–もあった。それを使えば強力な技も出せる。武器さえあればなんとか戦えたんだ。

「それでも9人仲間は死んじまったけどな。助けられなかった‥っ。

「あと、この学校の敷地の周りにはどうやら結界が張られているようでな。その結界の中にモンスターは侵入できないことがわかった。

「それで俺たちはこの学校で暮らすことを決めた。

「家はどうした?ああ、学校から家に戻ったあと、家のなかでモンスターに襲われた仲間が出たからな。全員学校で暮らすことにた。1人例外はいるけどな。

「あと質問するなって言ったよな。ツーペナだ。

「幸いベッドはあったから三段ベッドの枠を作ればいいだけだったし、水も貯蓄はあった。調理器具もあった。

「けど水はいつか尽きるし食糧も無かった。

「だからときどき近くのスーパーなんかに調達しに行ってる。

「もちろんスーパーと言っても店員はいないし店が存在しているわけではない。なぜかただ大量の食料が置いてあるだけだから、そこから持っていってる。

「そのついでに周辺の調査もやっていて、調達は俺たちの中では一つの作戦として実行されている。

「ほかには周辺の調査だけやったり、周りにモンスターが増えすぎたらモンスターの討伐したりなんてのが、作戦として実行されてるかな。

「んじゃ質問どうぞ。」紫音がやっと質問させてくれる。だけど、僕はすぐには質問できなかった。あまりの事態に戦慄していた。俺らが戦うしかない。死ぬかも知れない戦いに嫌でも巻き込まれる。それに既に死者が‥。俺はぼやく。

「なんか厨二病が考えそうな世界だな。」

「ちょっと違うよね。ゲームやラノベみたいって普通ならいうよね。つかお前が厨二病とかいうな。お前もそんなとこあっただろ。」

「はぁ?んなことねーよ。」

「だってお前、学校から1人で帰る時なんか時々『馬鹿な…この力を超えるものがいるとはな…どうやら、あなたたちには本気を出した方が良さそうだ。』とか言って光弾放つようなモーション取ったりしてたじゃねーか。…あれ?なんでこんなこと知ってんだ?俺、ずっと戦ってしかいねーはずじゃ…」

‥‥最初に会った通りすがりの人が言ってた事、間違ってなかったな。

というか恥っず!!恥ずすぎだろこれ!そんなこと見られてたなんて…

ああああああぁぁぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!!!

実際、特撮とかアニメとか結構好きだけど!特に魔法ものや『仮面ライダーウィザード』とか好きだけど!そういう風に戦いたいとか思った事あるけど!人がいないとこでそういう妄想してたけど!そんでそんなことしてたことあるけど!なんでそれを見られてんだよ!

ああああああぁぁぁぁぁぁぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!!!!!

「そんなに顔赤くすんなよw。耳まで赤くなってるけどw。質問ないの?なんか言って来そうだと思って身構えてたけど。」

質問‥ ‥、ある。

「作戦は何回行われたんだ?その中で何回死者が出た?」

「もう50回くらいはやってる。その中で死人が出たのは2回。

一方は1人。もう一回は7人。そんときはとんでもなく強いやつが襲って来て、生き残ったやつもあと一歩で死んでたって言ってた。あと、作戦外で死んだやつが1人。学校に来た後で家に戻ってたところを襲われたみたいだな。」

とんでもなく強いやつ‥。どんなやつなんだろう。少し気になる。

「魔力とか、技とかって?」

「それはまた今度にしてくれ。」

「ケチ〜」

「あとで武器の話して、お前の武器手に入れたら話すよ。だからそれはタンマな。他ねーか?」

すぐにもう一個浮かんだ質問をした。

「じゃあ学校の中は今どうなってんだ?」

「そうだな、説明するより実際に見た方が早いしわかりやすいしなぁ。よし、学校を回ろうか。学校見学だな!」

かくして、僕はよく知っているはずなのによく知らないこの学校をまわる、学校見学をすることになったのである。





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