お見舞い⑤

 入院6日目、私は、ショックで、午前中ずっと、泣いていた。

ナースの1人が、申し訳なさそうに、私に語りかけた。

「あの……どうしても、会いたいって人が……」

「私、誰とも会いたくないの……」

「すみません。でも、どうしてもということなので……」


 その時、部屋の扉がいきなり、開けられた。

「ごめんなさい。誰とも会いたくない。どなたか知らないけど、ごめんなさい。」

「何言っているんですか。私は、あなたの会社の後輩の真田 由利子(さなだ ゆりこ)です。そんなことは、どうでもいいですが、あなたは、体調を崩して休職していたんですよ。それなのに、事故で更に休むなんて、会社も、もう退職して欲しいんですって。退職のための書類も沢山あるので持ってきたんです!!」

「はっ?私は、専業主婦では?」

「何言っているんですか?もう、いい加減にして下さい!!あなたは、ずっと、独身で、友人もいなくて、仕事もろくに出来ない人間です!!」


 そう言葉を捨て吐いて、花束を置いていった。


 すれ違い様に、最初にお見舞いに来てくれた藤本 涼子が、現れた。

 私は、すがるように、彼女に訊いた。

「ねぇ、涼ちゃん、私、旦那いるわよね?」

 彼女は、笑っていった。

「ええ、当たり前じゃない。」



 この人達は、誰なの?


 私は、誰?


 完

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お見舞いに来てくれてありがとう ナカムラ @nakamuramitsue

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