お見舞い③
入院4日目、私は、ナースの人達の間で、人気者となっていた。
毛糸の小さな靴下を編んで、ナースの人達に配ったり、編み方を教えていたりしていたからだ。
「香さん、ありがとう。」
私は、ナースの1人に靴下を渡し少し休もうとしたところ、3人目のお見舞いに来てくれた人が現れた。
「涼子さんから、聞いたわ。心配したんだから、もう、昔から、香は、皆を心配させて困ったものだわ。あなた、覚えてないかもしれないけど、お母さんから、香が家出したって聞いて、皆で、探したこともあるのよ。」
私は、困惑して訊いた。
「ごめんなさい。あなた、どなた?」
「ごめんなさい。そうよね。私のことも忘れてるのよね。私は、木村 可奈(きむら かな)よ。中学からの友達だけど。」
「それなら、さっちゃんのこと知ってるわよね。」
「ううん。知らないけど。」
彼女は、さほど気にしていない様子だった。
私は、考えていた。
私って、かおりん、て呼ばれていたのでは……
それに、確か本人は、涼子さんでは、なくて涼ちゃんって呼ばれてるって。この人は、涼子さんて呼んでる。あ、そうか。中学からの友人だからかしら。
でも、さっちゃんは、涼子って、どういうこと?
彼女は、構わず、話を続けた。
「でも、安定期で良かったわね。一番、そのこと心配してたの。」
「安定期?私、赤ちゃん、もう、産んでるのでは……。」
彼女は、不思議そうに言った。
「まだ、5ヶ月よ。香のお腹の中に、いるわよ。」
そういうと、彼女は、花束を置いて帰った。
このことばかりは、ナースの人に訊かなければならない。
しかし、ナースは、「お体にさわりますよ。休んで下さい。」と、言うと、部屋から出ていった。
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