お見舞い②

 入院3日目、私に、また、お見舞いに来てくれた人が現れた。


 彼女は、お構い無しに話し始めた。

「涼子から聞いたわよ。私は、中学からの友達、砂田 幸江(すなだ さちえ)よ。私とあなたでよく、カラオケとかボーリングとか行ったわね。あー、楽しかった。事故に遭ったって聞いたから、びっくりして飛んできたわよ。」

 私は、そこで、すかさず、茶化した。

「でも、涼ちゃんよりは、遅かったけどね。あなたのことは、何て呼んでたの?」

 彼女は、笑っていった。

「さっちゃんって呼んでたわよ。あなたのことは、皆、かおりんって呼んでるわよ。」

 私は、自分が、かおりん、と呼ばれていたことを知ることができた。

「それにしても、あなたの夫、まだお見舞いに来ないのね。仕方ないか……」

 さっちゃんは、顔を曇らせた。

 私は、不思議に思って訊いた。

「仕方ないって、どうして?」

 さっちゃんは、困惑した表情をした。

「そのことも覚えていないのね。あなたには、産まれたばかりの赤ちゃんがいるのよ。あなたの夫は、多分、今、1人で赤ちゃんの世話で忙しいのよ。子供のことまで覚えていないなんて……ちょっと、ショック……。」

「ごめんなさい。覚えていなくて。」

「いいのよ。あなたのせいでは、ないわ。」


 そういうと、花束を置いて帰った。

「私に、赤ちゃんがいたの……」

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