お見舞い①
次の日の昼頃、私に最初にお見舞いに来てくれた人が現れた。
その人は、来るなり私の様子を見て、絶句していた。
しばらくして、気持ちが落ち着いたようで私に、ゆっくり語りかけた。
「あのね……私ね……」
私は、言葉を遮った。
「すみません。私、自分の名前と専業主婦ということしか覚えていないんです。失礼ですが、どなたですか?」
彼女は、慌てて自分のことを話し始めた。
「それは、ごめんなさい。私は、ね。あなたの小学生からの友人、藤本 涼子(ふじもと りょうこ)よ。今回は、大変だったわね。あなたは、クラスの中心人物のような子で昔から、明るい子だったわ。一般企業に入って、素敵な旦那さんに出会って、今、あなたは、幸せなはずよ。今は、大変だと思うけど、ここを退院したら、幸せな家庭に戻れるわ。だから、大丈夫。安心して……」
そう言うと、花束を置いて、そそくさと帰ろうとしたので、私は、急いで言った。
「ありがとう。来てくれて、涼子さん。」
彼女は、振り返ると「涼ちゃんでいいわ。昔から、皆に、そう呼ばれてたから。」と笑って、帰っていった。
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