第5話 筒美さんの告白

不幸だと思う。

だけどまあ.....これも仕方が無いのかな、と思う。

こういった事も起こるのが人生だろ。

そう前向きに捉えながらバイト終わりに俺はロッカーから荷物を取り出していると。

俺と一緒にあがった筒美さんが俺を見てくる。


「.....」


「.....」


筒美さんは何かを話したそうな感じだが。

そのまま飲み込む様な形で.....帰って行った。

俺はその姿を見ながら額に手を添える。


参った、と思いながら。

それから俺もバイト先を抜けて歩き出した。

自転車の所まで行く。

するとそこに.....明日香が居た。


「.....どうしたんだ?お前さん」


「うん。おにーちゃんと一緒に帰ろうかなって」


「.....ずっと待っていたのか?」


「家の仕事をしてから来たよ。だからずっと待っていた訳じゃない」


だがその額には汗が滲んでいる。

俺はそんな姿を見ながら溜息を吐く。

それから俺は明日香の額にチョップをした。

そして、お前な。随分と待っているじゃないか、と切り出す。


「そんな事ないもん.....待ってないもん」


俺はふくれっ面になるその姿を見ながら苦笑する。

そして、まあ待ってないにせよ待っていてにせよ。有難うな、と明日香の頭を撫でてからそのまま自転車を歩いて転がす。

コイツは本当に困ったヤツだと思うけど。

でも困った事をするのは嫉妬しているからだからそんなに起こったら駄目だよな。


「.....私はおにーちゃんの.....周りが知りたい。.....私はおにーちゃんの婚約者だから」


「まあ気持ちは分からんでもないけど.....」


「.....おにーちゃんを取られちゃうから」


不安そうな顔をする明日香。

俺はその姿を見ながらオレンジ色の夕日を見る。

そして、明日香。俺としてはやはりお前の事は好きになれないぞ。お前は未成年でしかも高校生なんだから.....、と言い聞かす。

明日香は、.....そうだね、と小さく呟く。


「でも私は.....おにーちゃんが好き」


「そうだな。お前が俺を愛しているのはよく分かる」


「.....うん」


そんな感じで会話しながら歩いていると。

目の前の河川敷に何故か筒美さんが座っている。

そして黄昏ていた。

それから俺達に気付いた様に見てから立ち上がる。

そうしてから俺を見てから。


「.....山本君」


「.....は、はい?.....つ、筒美さんどうしたんですか?」


「私の事.....覚えてる?」


「.....覚えているって今も会っているじゃないですか。どういう.....?」


だがその言葉に明日香がハッとした。

それからジッと筒美さんを見つめる.....明日香。

何だ?、と思いながらその顔を見る。

すると悲しげな顔をしていたが筒美さんは拳を握り締めてから顔を上げる。


「.....私は駅から落ちた」


「.....駅から.....え.....ま、まさか.....」


「私ね。君の事を知っている。それなりに昔から想っていた。.....私は.....明日香さんが現れてから焦り始めた。だから今言っておこうかなって。あの時は有難う」


眉を顰めながら、そうなんですね、と言う。

それから俯く。

何で気が付かなかったんだろう。

こんなにも近くに居たんだな.....って思う。

それから俺は筒美さんを見た。


「.....私は.....明日香さんと同じぐらいに君を想っているから。それだけは忘れないで」


「.....想っているって.....そんな.....」


「.....私だって負けない」


言いながら筒美さんは明日香を見る。

そして火花を散らした。

負けたくはない、と言いながら。

それから筒美さんは、じゃあ.....それだけだから、と去って行く。


俺はその姿を静かに見送ってから。

明日香を見る。

そんな明日香は顎に手を添えて悩んでいる様だった。

俺はその姿を見つつそのまま溜息を吐く。


「明日香」


「.....何?おにーちゃん」


「お前は知っていたのか?」


「.....知らなかった。気が付かなかったかな。まさか.....あの時の女の子だって」


「本当に気が付かなかったのか?」


「.....うん」


そうか、と言いながら俺は胸に手を添える。

心臓がバクバクと高鳴っていた。

俺はその気持ちを抑えながら筒美さんが去って行った方向を見る。


そんな間の事だが.....明日香は不愉快そうな顔を浮かべていた。

そしてそっぽを向く。

それからというもの明日香は口を聞いてくれない感じが続いてしまう。


俺はその様子に少しだけ罪悪感でなんと言うか複雑な感情で帰宅した。

筒美さんの突然の告白に俺ははっきり言って感情が揺らいだ。

それははっきり言うなら特殊な感情と言えるだろう。

困ったものだな。

この先どうしたものか。

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(改訂、再投稿)14年ぶりに会った女の子が14年ぶりに成長して求愛してきました.....え? アキノリ@pokkey11.1 @tanakasaburou

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