第2話 2度の初恋

「私は婚約する為に色々準備して来たんだよ?お父さんが児童養護施設への提携会社だったのも.....あ。でもそれは確定個人情報じゃないけどね。生い立ちが似た様な人が居るって話になったり.....」


「.....ふあ?.....そ、そうなのか。しかしそうとは言え.....まさかこんないきなり隣に引っ越して来るとは.....」


て、提携.....?

俺は美味すぎる俺の味付けに似合った味のカレーライスを食べながら。

福神漬けを作ったとの事でそれも食べながら。

目の前のニコニコしている明日香を見る。

明日香は嬉しそうに俺に笑みを浮かべていた。


「美味しい?」


「.....料理まで出来るとはな。掃除だけじゃなくて」


「.....うん。私.....頑張ったんだ。この10年ぐらいずっと」


「そんなに俺が好きなのか?」


「うん。.....ねえ。おにーちゃん」


私にくれた玩具のロケットペンダント覚えてる?

ガチャガチャの、と言ってくる。

俺は見開きながら、覚えているが.....それって14年前にお前におもちゃ代わりに渡したものだろ、と言う。

すると胸に手を添えてから古ぼけたロケットペンダントを見せてくる。


「.....これは.....マジか.....お前!?」


「私は.....貴方を本当に心から支えたいって思った10年以上前から.....こうして持っています」


「.....」


赤くなる明日香。

俺は赤くなって驚きながら、お前の家庭って.....裕福だったよな?、と聞く。

俺を割り出すぐらいだしな.....。

すると明日香は、そんな事関係無いよ。おにーちゃん。気持ちだよこういうのは、と言ってくる。

俺は頬を掻いた。


「私の家は確かに裕福。今だって私は社長の令嬢になった」


「.....」


「お父さんの会社、お菓子会社だけど年商100億円だって。.....でもね。私はお金に興味はありません。1億円貰ったけど.....」


「いや。どんどん話を進めるからそれもびっくりなんだけど。それってそれってマジに興味無いの?」


お金?無いよ。

世の中の女性は何だかブランドバッグとか興味あるみたいだけどね。

お金があれば。

だけど私は.....どうでも良い。

おにーちゃんとの愛があれば何でも良いの、と言ってくる。


「.....おにーちゃんと愛を育めれば」


「.....明日香。.....そういやお前は病気がちだったな。.....その件ももう大丈夫なのか」


「喘息なら問題無いよ。.....私吹っ飛んじゃった。お兄ちゃんと一緒になれるって聞いてね」


「.....」


私ねバレーボール部の副部長だったんだよ?凄くない?、と明日香はノリノリで言ってくるが.....それで良いのだろうか。

本当に、と思いながら明日香を見る。

俺もお金には疎い。

だけど.....このぐらいは分かる。


「俺と愛を育むんじゃなくて他の大金持ちと結婚したら良いんじゃないのか?」


「おにーちゃんは何も分かってないね。私はおにーちゃんが良いの」


「.....でも俺はただのしがないアルバイトだぞ」


「.....それがどうしたの?」


え?、と思った。

しかし明日香は呆けた俺に、おにーちゃんは頑張ってるよね?それだけで理由は十分だしおにーちゃんを好きになる理由も十分。

だから世界でおにーちゃんが一番好き、と笑顔を浮かべて俺の鼻を突いてくる。


「.....!」


「.....私ね。おにーちゃんじゃなきゃ嫌なの」


「.....」


「.....おにーちゃんが良いんだ」


真っ赤になる。

何でそんなに俺の事を、と思いながら手元の具材が入っている皿にスプーンを置く。

それから明日香を見る。

明日香は真剣な顔で、私は2歳から優しい貴方が好きだけど。

だけど確信したというかもっと惚れ直したのはあの日だから、と言ってくる。


「おにーちゃんと同級生ぐらいの女の子が人の間に押されて線路に落ちたよね」


「.....?」


「.....救ったよね」


「.....確かに救って表彰はされたな。.....え!?あれ観てとかいたのか!?」


テレビで表彰されているの観たよ、と笑顔を浮かべる明日香。

俺はボッと真っ赤になりながら俯く。

そんな馬鹿な事が。

確かにあの時はテレビクルーも入っていたけど。

明日香が観ていたなんて恥ずかしい。


「.....私のヒーローはやっぱりヒーローだなって思った」


「.....明日香.....」


「あの日から私はまた貴方が好きになりました」


「.....」


当時私は7歳だった。

だけど大きなテレビで輝かしく見えた。

あの日。

女の子を助けたおにーちゃんがね、と赤くなる明日香。

そしてモジモジする。


「だからおにーちゃんを今度は助けたいなって」


「.....」


がむしゃらに生きてきた。

しかしその事を評価してくれているのは上部だけかと思った。

だけどそうなんだな。

こうして誰かの為に.....俺は役に立っていたんだな。

俺は.....何だか嬉しくなった。


「.....明日香。有難うな」


「.....?.....何が?」


「.....いや。お前から聞いて良かった。当時の事を」


「あの日は私にとっては2度目の運命の日だったから」


「そうか」


俺は考えながら俯く。

ところでおにーちゃん、と言ってくる明日香。

それから笑みを浮かべたが。

何だ.....寒気がする。

この寒気は!?


「どうやらおにーちゃんは好きな人がいらっしゃるようですな?」


「.....」


「.....ん?何か意見があるなら聞きますけど」


「.....何でそれを知っている.....」


「おにーちゃんの出勤表に、筒美さんが好き、って書いてあった」


頬を膨らませる明日香。

そうだな。

あの表.....は。

そこら辺に適当に置いてたしな.....。

俺は青ざめながら顔を引き攣らせる。


そして明日香を見た。

明日香は冷ややかな視線を俺に向けている。

殺されるかもな俺。

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