第12話 結成!労働党!
いつも通りの朝だった。
いつも通りの時間に起きて、身支度を済ませて、過去に行って、出勤する。
何も変わらない日常だった。
ただ一つ東雲メイが何だかあわただしくしている様子を除いては。
私、篠崎カナメは相手の心を読むことができる。
だから、メイちゃんが何を考えているのかも手に取るようにわかる。
はずだったのだが、おかしい、メイちゃんの考えが読めない。
ほかの社員の心の中はいつも通り読めるのに、彼女の考えだけがどうしても読めなかった。
私は軽く咳ばらいをしつつ、向かいのメイちゃんに話しかける。
「おはよう。朝からずいぶん熱心ね。」
返事がない。
あれ、私無視されてる?
ちょっとむっとしながらも大人げない態度はとりたくないとそのまま仕事に取り掛かった。
「あら、篠崎さん珍しいわね。1時間以上勤務してるなんて。」
石上さんに声をかけられた。
彼女は言葉以上に驚いてることが心を読んでわかった。
「いえ、少し立て込んでてて、すぐに終わらせますのでお気になさらず。」
そう。と石上さんは自分のデスクへと帰っていった。
本当はメイちゃんのことが気になってあまり仕事に集中できていなかった。
いや、正確に言えば、メイちゃんが何考えているのか気になって仕方なかった。
こんなことは能力を授かった以来、経験したことがない。
一体どうしてしまったのかしら私。
考えがまとまらないので4階の休憩室でホットコーヒーを飲んでいた。
豆からひくタイプの自販機でおいしくて安いのはいいが、紙コップが熱くて持ち方に工夫がいる。コーヒーを口に運んだ時、休憩室のドアが勢いよく開いた。
「やっと見つけた!探しましたよ!カナメさん!」
メイちゃんが大量の書類を抱えて転がり込んできた。
「さあ行きましょ、時間がありません!」
メイちゃんが私の手を引いて休憩室のドアを開けようとする。
「どこへ行くの?東雲さん?私まだコーヒーが残ってるんだけど」
「説明している時間はありません!私の心の中読んでください!」
いつにもなく強引に半ば連行されるような形で私たちは休憩室を後にした。
働いてください!篠崎さん‼︎ 岩之助岩太郎 @haniwadouji
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