第11話 今わたしにできること

わたしは市営の図書館に来ている。

めぼしい本はわからないが、ジャンルは歴史と決めていた。

エントランスにある案内板をみて、西洋史のコーナーへと足を運ぶ。

市内の中心部にあるかなり大きな図書館なので、蔵書数も多い。

必然的に、奥まったところにある西洋史のコーナーへ辿り着くまで結構歩いた。

篠崎さんに連れられて行ったロンドンの光景が忘れられない。わたしにとってそれはかなり衝撃的な出来事であった。

わたしは、産業革命期の労働環境について調べてみることにしたのだ。

篠崎さんに聞く前にまず自分で調べてみようと思った。

調べてみるとさらに衝撃の連続であった。

自分よりはるかに幼い子どもたちが1日に17時間以上働かされていたこと。

賃金がとても低かったこと。

労働者が人として扱われていなかったこと。

わたしは本を読みながら悲しみや怒りの感情を抑えられないでいた。

そして今の自分はどうだろうかと深く考えさせられた。

会社に行っても上手く結果がでない日々。

周りと比べて自分の無力さに虚しさを感じる日々。

わたしが中心の世界。

今わたしができることは何だろうか。

そう考えたとき、私の中で妙案が浮かんだ。

わたしは本を閉じた。

目には涙が浮んでいたが、遥か先の雲を見つめていままでにない光が差し込んでいるのを感じた。

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