第269話
ボクは焼き鳥を頬張りながら考えていた。いったいどうすればこの鉱脈を上手に活用できるのか。
今、悪魔たちは人口も少なく、果実酒の生産や交易に追われている、人を割ける余裕はないだろう。となると、外からの人員に期待をするしかないが、それはそれで問題も多くはらんでいる。
「キナはどう思う……」
唐突な問いにキナが戸惑い、きょとんとした顔をしている。その顔を見ていてボクは閃いた。
「そうかその手があるのか! 帰ったらドリートにも相談しないといけなくなった。ありがとうキナ。キナを見ていて気が付いたよ。あそこを利用させてもらおう」
ボクはキナの手を取って大きく上下に振る。
「ところでキナは、燃える石の話は知らなかったのかい? なんだか初めてな感じがしたんだけれども」
するとキナは首を傾げる。
「話には聞きましたが、森では取れません。北部平原にも鉱脈はないようで、ごくわずかに採れるだけだと聞いています。私も鉱脈を見るのは初めてなくらいですから」
どうせ燃やすのであれば、木の方が手っ取り早いし、入手も楽だ。火を灯すのであればロウソクがあればいい。確かに燃える石の使い道など無いように思えるのも無理はない。しかし、世界にいる幾人かの天才たたちはすでに気が付いているはずだ。それはきっとあの国でも同様なのではないだろうか。
ボクたちは食事を済ませると、簡単に水浴びをして身体の汚れを落とすと、シェルターはそのまま残して、撤収した。
上空から見る森は縦と横に線が引かれ、東西に延びた線は、まるで突端へと向かう街道のように見えた。その西へと延びる道と直角に交差する南北に貫かれた道。すべてが、キナの作業によるものだ。流石に、ボク一人ではこれほどの作業はできなかったのは確かだ。
「すごい大鉱脈が広がっていたよ。島の西部全体とみていいかもしれないね」
興奮気味なのはボクだけで、キナはさきほどの通りだし、ドリートもいまいちピンときていないようだ。
熱効率や長時間の燃焼、高温などの話をしてもどこまで通じるのか定かではない。ボクだって、天才が気が付いたように閃いたわけではなく、ただ単に知識として知っているだけなのだから。
「まあ、ともかくこの資源を活かさない手はないと思うんだ。活かす方法も考えてある」
場所的にも申し分ない。葡萄畑からはかなり離れているし、瞳の都へ向かうコースからも外れている。将来的に港を開くのであれば、南側に作ればいいだけの話だ。栄えている島の東側の正反対に広がる鉱脈など条件としては最高だ。
「なんだか良くわからないんだけれども、ミタマがそれだけ興奮しているくらいだから、相当なのよね。分かった。この件はミタマに任せるから、指示をもらえると助かるわ」
ありがとう、ボクは応えると、とりあえずはあの区域への立ち入りを禁止する通達を出し、警備をするようにドリートにお願いした。
「それほど厳重である必要はない。そのうちたくさんの人が集まってくるようになるからね」
さて、問題はここからだ。このまま、材料だけを山ほど持っていたところで意味は全くない。活用の手立てを考えていく必要がある。この島でその手が立てばいいのだが、それが難しいとなると、外に頼るしかない。そこでキナの登場という訳だ。
「一旦帝都に戻ってから、ちょっとだけ準備をしてから、また出発だ。次もキナには一緒に行ってもらうからね」
ボクはルアに明日の昼ぐらいまでには戻ってくるように連絡を入れると、キナと次の手を打ち合わせた。一旦帝都に戻ってから、少し準備が必要になる。
「上手く行かなければ、行かないでやりようはあるんだけれども、こういうのって独り占めするとかえって良くない結果になるもんなんだよ。上手くいけばキナのところにもランのところにも、もちろん帝国にもね、恩恵はばらまくつもりだよ」
それが結果的にボクたちに福をもたらしてくれる、世の中とはそういったもんだとボクは思っている。
次の日、昼前に瞳の都の直上までいくと、すでにルアが待っていた。勝気な性格がそうさせるのかは不明だが、待ち合わせには必ず先に着いて待っているルアなのだ。
「そんなに長い時間じゃなかったけれども、都はどうだった?」
ルアは軽く頬を赤らめる。どうやら甘えながら、帝都での暮らしぶりなどもたくさん話せたようだ。両親にしてみれば、今までのルアの学校生活がそれほど良いものではなかっただけに、喜びは大きいはずだ。ルアを見ているだけで、充実した生活を送っているのが良く分かるからだ。
「まあ、いつもと一緒、両親も元気そうだったし、里帰りできてよかったわ」
そう言うルアは手に大きな箱を持っている。それは? ボクが聞く。
「中身は多分、真珠よ。ドリートさんに渡して欲しいって父様が言ってた。中に手紙も入っているからって」
ボクは箱ごとルアを腕に抱くと、岸部まで飛んでいく。ルアはそこで服を着る。そこからさらにスノックの官邸まで飛ぶのだ。
流石に、人化しても人魚化しても着られる服を作ってもらうのは難しい。濡れない素材なども存在していないだけに、まず不可能と言っていいだろう。せいぜいが水着の素材を使った長い丈のワンピースぐらいしか思い浮かばないが、それだと逆に泳ぎにくいだろう。帝都で人魚化するのは、お風呂に入るときか、例のプールぐらいだから、それほど問題ではない。そう頻繁に里帰りする訳でもない。まあ、ちょっとの手間、程度で済んでるので大きな問題にはならない。
官邸に戻ると、ルアは荷物をドリートに手渡す。中身は何か分かっているので、言伝などがないかを確認する。
「詳細は箱の中に手紙が入っているから見て欲しいって父様は言っていたわ」
ルアはそう言うと、バスタオルを手にした。
【拙い文章ですが、最後までお読みいただきありがとうございます。ちょっと堅めだけど、こういう小説嫌いじゃない、先がちょっとだけでも気になっちゃったという方、★評価とフォローを頂戴できればありがたいです。感想もお待ちしています。作品の参考にさせていただきます】
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