第6話 実力

 シェフィにしてやられてしまった。確かに僕なら黙らせられる。だが、逆に言えばジンも巻き込んでしまうということ。そんなのをジンに言えるはずもない。いや、むしろ伝わったら本気にならざる負えない。


「今更足掻いても無駄よ、カイ」


「…………はぁ」


「ちゃんと剣馬鹿には伝えておくわ」


 微笑みながらも相手をからかっているような表情を浮かべるシェフィ。でもまぁ、その一方で少し楽しみでもある。普通なら王国最強の剣士と戦えるなんて機会は滅多にない。まぁ、僕が言えばジンなら嬉々として相手になってくれるだろうけどさ。


「せっかくの機会だし、もちろん全力は出すけどさ、一体どうするんだい?」


「それはもう考えてあるわ、騎士団の公開修練で貴方とジンの模擬戦を見せる。そしてその中には王族派の人達に後ろ楯になって貰えれば最高ね」


 騎士団は王国守護の要であるが故に実力主義。人選は全てにおいて騎士団団長に決定権が委ねられている。故に採用基準や試験内容もとてつもなく厳しい。入団を許されるのは極僅か。騎士団に不誠な事がないようにと設けられてるのがこの公開修練。王族を中心に必ず定期的に騎士団を訪れることになっている。


「そんなに上手く行くかな?」


「それは正直……五分ね、疑われても不思議はないし。でも以前の模擬戦の情報も一部は伝わってたのよ?」


「……ま、まさか?」


「そ、そのまさか。貴方の地位と実積を付けるためよ」


 ま、まさかそこからの計画だったとは。不覚を取った。もっと早く気付いていれば。でも時既に遅し。以前は修練上の半壊程度で済ますことが出来たけど、もし互いが本気なら…………ははは、考えるのやめようかな。あ、頭が…………


「あの剣馬鹿のことだから、カイが相手なら全力出すでしょうね。いえ、出して貰うわ」


「デュランダルはどうしよっか?」


「それは貴方に任せるわ」


「公開修練ってことはシェフィも見にくるのかい?」


「えぇ、もちろんよ」


「そっか、だったら、負けらんないな」


「次の公開修練は一週間後よ、カイ」


「わかった、準備しておくよ」


シェフィは自分の言った言葉や一度決めたことは必ずこなす。おそらくすでに貴族には書簡が回ってるとみるべきだろうね。ジンのところにも回ってると思いたくない。



……そのころ団長室では……


「ふっ…………はっはっはっはっはっはっはっは!!!!!!!!!!!」


「……団長!静かにしてください!!!」


「久々に面白かったぜ。お前なぁ、これ見て笑えないわけがないだろ?」


 そこには……


 王家より騎士団公開演習の内容について通達

 主な内容としては各団員の模擬戦闘とする

 使用する道具も制限をしないこととする

 


 参加する各家

 ヴェイル公爵家

 アグラス公爵家

 ヴォルフ公爵家

 ティグル伯爵家

 アクト伯爵家

 

 上記に記に記した各家はは必ず参加されたし。

 参加する各家は事前に参加する人を書類にて返答されたし。

                                  

「なんせ、が本気であの野郎をのし上げるつもりだからな。俺としても久々に全力が出せる、これほど楽しみなことはねぇよ」


「私の家も参加ですか、当然といえば当然ですが。他には学園長のヴォルフ伯爵家

と副学長のアクト伯爵家ですか」


「人選もかなりまともだな。ま、そりゃあそうだろうよ、副長レイン・ティグル次期伯爵殿」


「団長の師であるヴェイル伯爵様も参加されるのですね」


「まぁ、ローグ師匠もカイの実力は認めていたからな。待ってろよカイ、今こそ一本取ってやるからな!!!!!!!」


「やりすぎて修練場壊さないで下さいね、修理費用とかだって無限ではないのですから」


「わかってるよ、でもわかるだろ?」


「私としてもあれほどの実力を持つカイ様がになっていただけたら嬉しいのですがね」


「んな、そりゃどういうことだよ?レイン?」


「そのままの意味です。もし嫌ならとっとと仕事してください!」


「……へいへい」


 以前も非公式にジンとカイは模擬戦をしていた。その時はシェフィが止めなければ修練場事態が使えなくなっていたかもしれない。それほどまでに激しかった。騎士団員には伝わっていて。騎士団の特別指導顧問にしようとした人が何人かいた。それどころか、カイに弟子入りしようとする団員を団長が「俺がいるだろぉ!!!」と折檻していたのは別の話













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