第5話 二人の現状
「……さてシェフィ、まずは内堀まで埋めた理由は?」
「そ、相談とかしたら絶対断るでしょう?」
「そりゃそうでしょ?もし回りの貴族共の影口や嫌味なんて聞いた日には即座に折檻どころじゃないよ!」
「で、でも、私はカイと一緒に学校行きたい。しばらく公務も無いし」
「そりゃ僕も一緒に行きたいけどもね?」
一緒にいるだけでシェフィにも迷惑がかかってしまう。それは良くも悪くもだ。ちゃんとした身分があって出自もハッキリしてるならまだ良い。でも僕はそうじゃない。どんなにシェフィが見向きもしなくとも王族として回りは見る。王族として見られる以上は相手の地位も見られると言うことだ。
「いいかいシェフィ?何度でも言うよ?君は王族だ。どうしたってその肩書きは付いて回る。君が王族を辞めたとしても元という形で結局は見られる」
国内において姓を持たない人はいない。それは魔属も含めて。国内だけではないが、社会的地位の順位というものが存在する。もちろん一番は王家、二番に公爵、三番に伯爵、四番に子爵、五番に男爵、六番に士爵、最後に平民。といった形になっている。例外は商人や騎士団、王立学校の教師といった実力や実積が物を言う人達。例え平民であったとしても実力をもつ人達はいる。ちゃんと評価できる人達は一定数存在するのも確か。故に一部の貴族の中には平民も雇用したりするなんてのも普通にある。商人であれば取引相手になるといったように。
「そ、そんなことわかってるわよ」
「それなら尚更だよ。こうやって会うのは別だけど、学校、しかも王国最難関に僕が行けばどうなるか、わかっているだろう?」
「それは…………」
シェフィとて分かっていない訳ではないんだ。ただ、これはどうしようもないことでもある。実積は回りが認めてこと意味のあるもの。それは友人や知り合いではない。地位の高い人達が有無を言えない位じゃないと。
「確かに僕は君がいなければ、あの日に出会わなければ僕はここにはいない。恩を仇で返せなんて、教えて貰った覚えなんて無いからね。でも物事の分別はつけないといけないよ?」
「……だ、だったら」
「これは個人の感情でどうにかしてはいけない問題なんだ。これが発展して続き、もし最悪の場合は対立する恐れすらあるんだよ?そうなったら教師どころの騒ぎじゃないよ?」
「そんなことわかってるわよ!でも、でも、貴方が、正しい評価をされないのは、私は、私が我慢ならない!だってカイは…………」
ポロポロとその優しい瞳からは宝石のような涙。ほんとに、もう。そういうところが好きなんだけどさ。
「…………おいで、シェフィ」
「…………うん」
僕の胸に顔を埋めるシェフィを優しく抱き締める。片手は頭に乗せて慈しむように撫でる。
「シェフィ、君の気持ちは本当に嬉しいよ。僕はどうしたって怒れないし何も言えない。その分君がこうやって怒ってくれる。それに本当に救われているんだよ?」
「…………嘘つき」
「嘘じゃないよ、僕がシェフィに一度でも嘘を付いたことがあったかい?」
首を横に降って答えるシェフィ。僕はいつだって君の味方だ。立てた誓いを、誓約を破るつもりはない。涙ながらに怒るシェフィを宥め続けようやく落ち着いた。
「少しは落ち着いたかい?」
「カイはずるいわ、乙女の泣き顔を見るなんて」
「そうだ、それなら今度デートでも行こうか?」
「え?ほんと?、う、嘘じゃない?」
「もちろん、ちゃんとエスコートもするよ?それだけじゃ足りないかい?」
「ふ、ふん、足りるわけないじゃない!私の言うことを一つ聞くこと!いいわね!」
「わかった、それでいいよシェフィ」
「それにね、カイ。だったら実積を作れば良いのよね?公爵が黙る位の」
「公爵が有無を言わない程の実積なんて簡単には作れないよ?」
「そうね、確かに普通ならええ、普通なら不可能ね」
「ならやっぱり…………」
「でもねカイ。貴女だけが例外なのよ」
僕だけが例外?それってどういう意味だ?
「さっきカイは、私の言うことを一つ何でも聞くって言ったわね?言ってないとは言わせないわ」
「もちろん、二言は無いよ。一体何を…………ま、まさかシェフィ!?」
「あら、もう気づいたのカイ?その・ま・さ・かよ?」
しまった、何てことだ。シェフィを宥める事に夢中になってしまった。確かに僕の予想通りならそれで行けるかも知れない。だがそれは…………
「カイ、貴女だけが例外の理由それはね……………………貴女だけが国内で唯一騎士団団長と互角だからよ!」
そう、シェフィの言う通り。僕だけが唯一国内でジンと互角に戦える人物。シェフィが考えたのは友好的にしてくれてる貴族を招き姓の無い第二王女の近くにいる平民と騎士団団長が互角に渡り合える実力を示す。つまり、ジンと僕が模擬戦をするということだ。
「さっき二言は無いって確かに言ったからね、いいよ、ジンとの模擬戦」
「流石カイ。潔いのね、ジンには伝えておくわ」
してやられてしまった。それにしてもジンとの模擬戦かぁ、うっ、さ、寒気が…………でも、仕方ない…………か。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます