第4話 教える側へ
「よぉ、久しぶりだな、カイ」
「やっぱり、ジンか、どうしたんだい?こんな時間に」
もう少し時間が過ぎればお昼頃とはいえ、騎士団の任務がない日中は訓練の時間になっているはず。ん?どうして知っているのかって?……それはおいおいね。
「まぁ、ちょいと伝言っつーか、用事があってだな」
用事?どういうことだ?騎士団団長を使いにするなんて、よほどのことじゃない限り、そんなことにはならない。騎士団は王国守護の要。しかも団長を担うということは王国守護最後の砦とすら言える。文字通り国内最強だ。団長案件の任務でもない限り、日中は迂闊には外には出れない。
「用事?珍しいね。何かあったのかい?」
それにしても歯軋りが悪い。これは本当に厄介ごとになっているようだ。普段のジンならもっと勢いがあるのに。
「カイ、遅いわよ?って、なんであんたがここにいるのよ剣馬鹿?」
「はぁ、やっぱり姫さんもいるのか、どおりで魔力が残ってる訳だ」
「うっさいわね。一体何の用なの?忙しいんだけど?」
「ハッ、どうせカイの野郎とイチャイチャしたいだけだろうが?そんなんだからいつまでたっても……」
「なんですって?そんなこと言ってて良いのかしら?そういえば先日危ない真似してたわね」
「あ、危ない真似?し、知らないな?」
「そう、白を切ってもいいけど、婚約者さんと私って旧知の仲なのよねぇ?」
「……な、何が言いたい?」
「婚約者さんから、『危ない真似をしたら折檻』って言われてるんじゃなかったかしら?団長さん?」
「…………ひ、姫さん、まさか」
「洗いざらい、お茶会にでも招待して話してしまうかもしれないわね?せっかくだしこの後……」
「す、すいませんでした!何卒お許しを!あいつの折檻だけは勘弁を」
「わかれば良いのよ。わかればね」
ジンは見事としか良いようのないとてつもない速業でシェフィに土下座をする。というか、この二人も相変わらずだなぁ。土下座するならジンもシェフィ喧嘩を売らなければ良いのに。
「二人ともその辺にしておこう?さてジン、一体何があったんだい?」
「ま、そうだな、この辺にしとくか」
「あんたが来るだけでろくでもないことは間違い無さそうね」
「姫さん、その言い様はないぜ。カイにはチラッと言ったがまぁ、簡潔に言えば伝言を預かった」
「伝言?誰からのだい?ジン」
「…………国王陛下……からだ」
「……冗談じゃないよね?ジン」
「んな訳あるか?仮にも団長だぜ俺はよ」
おかしい、何かがおかしい。必要なことならシェフィを通してくれてたのに。陛下に限ってそんなこと、伝え忘れた?いや、陛下は細かい部分にも目を配る人だ。じゃなきゃ国を纏めるなんてできやしない。一体何が。
「まぁ、相手は姫さんじゃねぇけどな」
「じゃあ、まさか?」
「そう、お前宛だカイ」
「…………!?」
どういうことだ。シェフィ宛ならまだ分かる。だがよりによって僕。それ程までに大事なのか?団長を使いにするほどの案件って
「先日、王立学院の教師が一人、辞めたのは知っているな?」
「もちろん、シェフィから聞いたからね?それで、あぁ、後任が決まったのかい?」
「…………」
「…………まぁな」
ん?どうしたんだろう?シェフィもさっきから黙って?ジンも歯切れが悪いし…………待てよ?
後任が決まった?その為だけに?
「二人ともどうしたんだい?一体、何か様子が…………そうか、わかった、僕はやらないよ」
「まぁ、気づくか。そうだ、後任は……お前だカイ」
「そんなことだろうと思ったよ、でも引き受けられないよ?」
「安心しろカイ。ここにいる何処かの姫さんも一枚噛んでるからよ」
「…………シェフィも!?」
「……………………てへ」
んな、つまり、逃げ道なしじゃないか!シェフィのこの満面の笑み。怒る気もしないほどに清々しいよ。全く
「あ、正式な決定で既に調印済みで拒否権なし、学校の教師及び生徒にも通達済みだ」
「………まさかの外堀どころか、内堀も埋められてた!」
「そういうわけで、確かに伝えたぜカイ、そんじゃ、頑張れよ!」
「あ、まて、逃がさないよ、ジン!」
「恐い副長に起こられちまうからな、じゃあなカイ、また訓練つきあえよ?」
そういいながら即座に退散していくジン。全く逃げ足も速いなんて反則だよ。もう姿も見えないし。さて
「シェフィ?」
「な、何かしら?カイ」
「…………説明してね?」
「…………はい」
どうやら、いつもの仕返しができそうかな?
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