第18話 十悪会の報復
十悪会の報復はかなり過激なようだ。
話を聞いてみると、街の入口に千人規模の男達が押し寄せてきているという。
「ああぁぁ。俺は十分に休ませてもらったから、俺が片付けるよ」
「お前だけにいい格好させねぇぞ!? 俺達の街だ! 俺達も出るぜ!」
モーリーが腕を回してやる気満々のようだ。
「僕も行くよ!」
「オデも行くんだな!」
「私も行くわ! 回復は任せて!」
「結局みんな出るのか。じゃあ、行くか!……あっ、俺剣無いんだった」
「なくても強えだろ? 必要か?」
「そうだなぁ。いらないか」
モーリーと並んで歩きながら、街の入口に向かう。
歩いているとスラムにいた仲間達が続々と後ろに連なって歩いていく。
大名行列のようだ。
入口に到着する。
「ふぁぁぁぁ。お前ら、何しに来たんだ?」
「あぁ!? お前達がベガ様を殺ったのか!?」
「んー。そうだけど?」
「俺達はベガ様の部下だったものだ! 俺達はベガ様の仇を取りに来た! 覚悟しろ!」
「自分達の頭を殺られたら頭に来るもんな。わかった。全員相手しよう。かかって来い」
手を広げて受け入れる格好を見せる。
「ふざけやがってぇ! 殺るぞ!」
「「「「おぉぉぉぉぉぉぉ!」」」」
男達が押し寄せてくる。
「さて、俺達も行こうか」
「僕こんなに大勢と戦えるかな?」
「オデ、不安」
「はははっ! やってやる!」
アークとドンガは不安そうだが、モーリーは気合十分のようでやる気満々だ。
ドゴッドゴォォッ
一人、ジャブで殴り倒す。
次のストレートでもう一人倒す。
こりゃキリがねぇな。
けど、ケジメつけねぇとな。
全員相手しよう。
一人一人、拳で殴り倒していく。
「俺は、ベガ様の一の子分だ!」
大柄な男が現れた。
「なんか、どっかでも聞いたぞ? 一の子分、何人いるんだ?」
「俺だけだ! 行くぞ!」
手を合わせて叩き潰すように上から振り下ろしてくる。
ガシッ
しっかりと片手で受け止めた。
「なに!?」
子分は驚愕の顔をしている。
そのままクルッと周り、バックスピンキックを放つ。
ドゴォォッ
腹を抑えて倒れ込む子分。
実力があった奴だったのだろう。
そいつが倒れたことで周りの奴らはかかってくる事に躊躇いをみせている。
「どうした? 俺は、ピンピンしてるぞ?」
「うるせぇ!」
殴りかかってくる男。
「よいしょ!」
クロスカウンターでぶっ飛ばす。
吹き飛ばされた男は人だかりの中に埋もれる。
「まだまだかかってこぉーい!」
全体に聞こえるように声を上げる。
「調子乗ってんじゃねぇ!」
バギッ
「くたばれぇ!」
ドゴォォッ
「死ねぇ!」
グシャッ
次々と向かってくる男達を倒していく。
周りの仲間たちも次々と倒す。
二時間を超えた頃。
そこに十悪会の面子は立っていなかった。
「はぁ。はぁ。はぁ。お前らなぁ、俺達は、お前らごときには殺られねぇからなぁ! 」
クーヤの身体に切り傷、打撲はあるがそれだけであった。
「勝ったぞぉぉぉぉ!」
「「「「「おおぉぉぉぉぉぉ!」」」」」
勝鬨を挙げる。
十悪会はまだ健在でこれからもまだ狙ってくるだろう。
「なぁ、俺達さ、この街で自警団やろうと思ってんだよ!」
モーリーが帰りの道中で話してくれた。
「良いんじゃないか? 冒険者の経験で、いざこざの仲介はお手の物だろうしな?」
「へへっ。そうなんだよな。だから、みんなでやろうってなってよぉ」
「良いんじゃねぇか?」
「なぁ、クーヤ、自警団のリーダーになってくれねぇか?」
「はぁ!? 俺が自警団の頭に? そう言ってくれるのは嬉しいが、俺には無理だ。十悪会に狙われてるってのもあるし、なによりガラじゃねぇよ」
モーリーは肩を落とした。
「やっぱりダメか……」
「俺なんかより、モーリーの方がリーダーに相応しいだろう? 今回の反乱だってスラムの連中をまとめあげていただろう」
「そりゃそうだがよ、クーヤの強さに憧れを抱いたヤツらが多いんだよ。だから、お願いしたんだが……」
「俺は、十悪会を潰す。そして、平和な国にしたい……無謀かもしれないけどな……」
「いや……クーヤならできると思う」
「そうか?」
「あぁ。この街だけにおさまる奴じゃねぇ。もっとでけぇことをする! 俺はそう思う!」
両手を開いて大袈裟に言った。
「はははっ! 大袈裟なんだよ!」
「いや! 俺は確信してんだ! クーヤは王になる!」
「わかった、わかった。けどな、王なんて俺にはなれねぇよ」
「そうか? いいと思うんだけどな」
腕を組んで難しい顔をしている。
モーリーの肩に手を乗せる。
「まずは、モーリー達がこの街を良くしてくれよ。そしたら、この街に来た人達がここはいい街だ、真似しようって。そう思ったら同じように平和な街が広がっていくかもしれない。その方がよっぽど現実的だ」
一緒に歩いていた、同じようにスラムから反乱を起こした仲間達を見渡した。
「クーヤは! もっとでかい事をしに旅に出る! 俺達でクーヤの守ったこと街を守っていこう! 俺に付いてきてくれるか!?」
「「「おう!」」」
「当たり前よ!」
「クーヤ以外にはお前しかいねぇ!」
「俺達で守っていこう!」
口々に賛成の意思が伝わる。
「みんなありがとう! 今日はゆっくりと休んでくれ!」
皆に労いの言葉をかけると、クーヤに向き直った。
「なぁ。ちょっと付いてきてくれないか? 紹介したい人がいるんだが」
「あぁ、行くよ。皆もいいか?」
「私は大丈夫よ」
「僕もいいよ」
「オデもいいだな」
「よしっ! じゃあ、行こう!」
ついて行くと立ち止まったのは一軒家の前であった。
「ここだ。入ってくれ」
そう言いながら扉を開ける。
中にはモーリーに比べたら小柄な可愛らしい感じの女性が佇んでいた。
クーヤ達が中に入ると立ち上がり深々と礼をする。
「モーリーの妻のアリシアです。この度は私達を助けてくださって本当に有難う御座いました」
「えっ!? モーリー、結婚してたのか!?」
照れ臭そうに頭をかいている。
「実はそうなんだ。捕まったパーティの女ってのがコイツの事でな」
「で、結婚していたと……」
「そうなんだ。だから、助けてくれて本当に有難う! クーヤが居なかったら、アリシアはどうなっていたかわからない」
「他にも捕らえられている人が居たんですが、十悪会が倒された後、この人の仲間達が全員解放してくれました」
「そうなんだな! 俺は倒れたから何もしてねぇけどな」
「いや、あのベガをやったのはかなりデカい事だった。クーヤじゃなきゃ出来なかったことだ」
「そうか? まぁ、これからはモーリー達が街を守っていくんだろう? 頑張れよ!」
バシバシとモーリーの肩を叩き激励する。
「あぁ! きっといい街にしてみせるさ!」
「モーリーならできる」
「いつこの街を出るんだ?」
「あー。装備とか準備出来次第だな」
「それなら、十悪会から徴収した物がある。持ってけよ」
「すまん。助かる」
「報酬も渡すぜ。金がたんまりあるからな」
「はははっ。アイツら溜め込んでただろうからな。じゃ、今日は休む。明日また顔出すわ」
「おう。ゆっくり休め」
クーヤ達は再び宿に戻り、一時の休息をとるのであった。
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