第11話 触れちゃいけないもの

「立ちはだかる者は、全てぶっ潰す!」


 血だらけで倒れる冒険者風の男。


「きゃー!」


「なんだ! なんだ!?」


「おい! お前こんなことしてタダで済むと思ってるのか!?」


 冒険者風の男が胸倉を掴んで怒鳴り散らしてきた。


 腕をひねりあげて倒す。


「いででで」


「邪魔すんな。邪魔するなら殺す」


 転がったまま邪魔する気が無くなったようで大人しくしている。


 だが、ほかの者はそうはいかなかったようだ。

 領主邸までのメインストリートに冒険者風の男達が埋め尽くす。


「アーク、ドンガ、突破するぞ。目標はあの豪邸だ」


「うん。容赦はしないよ」


「オデ、怒ってるんだな!」


 そうだよな。

 怒ってるのは俺だけじゃねぇ。

 アークとドンガなんかマリアとずっと一緒にいるんだもんな。

 怒らねぇわけがねぇ。


「行くぞ」


 静かに剣を抜く。

 

 俺は正面突破だ。


「ミスト」


 濃い霧が立ち込める。


「ソナー。ドンガ、付いてこい」


「わかったんだな!」


 探索魔法を頼りに人を特定する。


「なんだ!?」


「急に霧が……ぐわぁぁ!」


「なんだ? なにがおきがぁぁぁ」


 アークが上手くやってるみたいだな。

 アークにはこの濃霧が限りなく薄く見えているからな。


 目の前に剣を振り回している男がいる。

 冷静に、剣を捌き切りつける。


「うわぁぁぁ!」


 血を流して倒れる男。


 前には三人で固まっている奴らがいる。


「ドンガ、前に三人」


「任せるんだな!」


 盾を構えて踏み込む。


「シールドクエイク」


ズドォォォォンッッ


「「「ぐわぁぁ!」」」


 三人一気に倒れる。


「魔力が切れるよ!」


 アークが下がりながら声を上げた。


「下がってろ!」


 霧が晴れると倒れている男達の後ろにはまだ沢山の男達がいる。


「僕はもうあんまり使い物にならないよ!?」


「オデはまだ行けるんだな!」


「アークは後ろから狙ってくるやつを牽制してくれ。ドンガは一応アークを守れ」


「クーヤはどうすんの!?」


「俺達には誰も近づけない。エアパリィ」


 正面からアークの後ろへ空気が流れていく。


 剣が振り下ろされるが、空気が受け流す。


「なにがおきてる!?」


「攻撃が流されるぞ!」


「「「「オラァァァァ」」」」


 男達がスクラムのようにガッチリ組んで突進してきた。


 ズルッと後ろに流れていく。


「「「「ぐわぁぁぁ」」」」


 これで屋敷まで一直線だ!

 どけどけどけぇぇ!


 人を受け流しながら前に進んでいく。

 もうすぐ屋敷に着く。


 何やら太った男と結界を使う男が外で見ていた。


「お前達何をやってんだ! 金はたんまり出してるだろう! そいつを始末しろ!」


「「「「うらぁぁぁぁ」」」」


 武器を振りかぶって叩きつけてくる。


「「「「うわぁぁぁぁ」」」」


 が、空気の流れに阻まれ攻撃ができない。


 すると、結界の男が意見している。


「あの中からは攻撃できないみたいです。魔力切れを待ちましょう」


 そう言うと腕を組んでダランと立っている。


「エアバレット」


 結界の男は咄嗟に避けた。


「おいおい! 同時発動って、頭どうなってんだよ!?」


「エアバレット」


 再び空気弾を打つ。


「ちぃ! 防結!」


 結界を張って防御したようだ。

 だが、角度をつけた空気弾が掠めた。


 あれ?

 もしかして平面しか張れない?


「エアウォール」「エアバレット」


 利用したのは跳弾だった。


パパパパパパァァンッ


「ぐわぁぁ!」


「いだい! いだい!」


 結界の男と太った男に当たった。

 男達はのたうち回っている。


「くそっ! こうなりゃ力づくだ! 結界! フォルムソード」


 結界の剣を振り下ろしてきた。


ザシュッ


「くっ!」


 浅くだが腕が切れている。


「なんだよ。効くじゃーん!」


 なんでだ?

 物理は防げるはず……。

 そうか……あれは……。


「剣は効かないけど、結界なら効くんだな!?」


 あの剣は普通の剣じゃ太刀打ちできないな。

 俺もやるか。

 

「はぁ。かかってこいよ。エアソード」


 空気を剣の形に固めて具現化させる。


「アーク、ドンガ、後ろは頼んだぞ」


「うん! 任せて!」


「背中はオデ達が守るんだな!」


 両者が見合って構える。


「オラァ!」


 攻撃してきたのは結界の男。

 左からの振り下ろし。

 体を左にかたむけて避ける。

 

 体重を右に移動させながら。

 真横にぶった斬る。


「あっぶない!」


 ピョンっと飛び上がる。

 ジャンプが高い。


「はははっ! こっちの番だよ!」


 真上からの打ち下ろしが来る。

 受けて立つ。


ギィィィィィンッッッッ


 ギリギリギリとお互いの剣がいがみ合っている。


 スッと剣を引き、結界男の体制を崩す。

 そこにハイキックを放つ。


「うおっ!」


 咄嗟にしゃがんで避けるが。

 いつもの十八番だ。

 バックスピンキックを放つ。


ガギッ


 結界で防がれた。

 隙だらけな体勢で止まってしまった。


「はっはぁ! もらったよ!」


 結界の剣が迫る。


「エアボム」


 キックを放った足とは逆の軸足の裏に小さな空気を圧縮して爆発させる。


 フワッと頭上に浮く。

 今度は結界男が体制を崩した。


「これでおしまいだ。エアシュート」


 空気の塊を蹴り飛ばし、結界男に着弾する。


「爆ぜろ」


ドガァァァァァァンッッッ


 デブ諸共木っ端微塵になった。


「お前達は俺達の触れちゃいけねぇ者に触れた。死で償え」


 冒険者風の男達はボスが死んだことを確認すると散り散りになって行った。


 屋敷の中を探す。

 1階は全部見た。

 2階も全部見た。

 マリアが居ないのだ。


 まさか始末された!?

 そんな事……。


「あっ! クーヤ! このカーペットの下になんかあるよ!」


 それを見つけたのはアークだった。

 なにやら南京錠がかかっている。


「オデが壊すんだな! シールドクエイク!」


ギャギャギャギャギャガギンッ


 地震の振動に負けて鍵が砕け散った。


 バカっと開けると下に続く階段があった。

 下に降りていくと、鉄格子の中に女性が閉じ込められていた。

 中には死んでいると思われる者もいる。


「マリアーーー!」


「クーヤ! ここよぉー!」


 鉄格子の間から出してる手が見えた。


 駆けつけると疲弊している様子であった。


「大丈夫か!?」


「お腹すいたわぁ。たぶん他の人も十分な食事は与えられてないみたい。解放してあげて!」


「ちょっと待ってろ。今鍵探してくる」


「僕は2階探してくるよ」


「オデは、1階を探すんだな」


「あぁ。頼んだ!」


 地下室の入口付近の部屋を見てみる。

 食料庫のようだ。


 自分で捕らえておいて食事も与えないなんて餓死させるために捕らえたのか?

 なんの為に捕らえたんだ!

 自分勝手すぎる。


「クーヤ! なんか執務室っぽいところに鍵あったよぉ!」


 ジャラジャラと沢山の鍵がついた束をアークが持ってきた。


「片っ端から開けよう」


 鍵穴に片っ端から鍵をさして時間はかかるが開けていく。


 捕らえられてた人たちは全て連れていく。

 皆で外に出ていった。


「「「ワァァァァァァァァ!!」」」


 歓声が上がった。


 街の人達が捕らえられてた人達の元へ駆けつける。

 みんな街の住人だったようだ。

 ここの領主に随分苦しめられていたんだそうな。


「おれぁ、お前達なら何とかしてくれると思ってたんだ! 俺の目に狂いはなかったな!」


 最初に忠告してくれたおやっさんだった。


「あっ! おっちゃん! もうこの街を牛耳ってた奴らは居なくなった。好きに過ごせるな」


「ホントに有難うよ」


 頭を下げてくる。


「俺達も仲間が捕らえられたから、助けただけだから……」


「それでもいいんだ。これで開放されたぜ」


「ねぇ、ご飯食べたい!」


 おっちゃんといい感じに余韻に浸っていたが、マリアのお腹が限界らしい。


「おっ! じゃあ、俺のとこの串焼きをご馳走するぜ!」


「あたいのところもご馳走するよ!」


「俺も金入らねぇ!」


 屋台を出していた人達はみんなに料理を振舞ってくれた。

 そして、宴会が始まった。

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