第9話 襲撃

 盗賊の討伐を終え休んでいた四人。


「ん? くせーな」


 異様な焦げ臭い匂いで飛び起きる。

 家の壁から煙が出ていた。


「みんな起きろ! 火事だ!」


「んー? ホントだ臭いね」


「逃げないと……なんだな」


「なにー?」


 マリアを抱えて外に出る。

 アークとドンガも後に続いて何とか外に出る。


「おっ! 出てきたぜぇ! オラッ!」


 いきなり剣を振り下ろしてきた。

 咄嗟に後ろに飛んで避ける。


「おー。流石コーザさんを殺っただけあるな。こうやって外に出して殺したんだってな?」


 盗賊の残党か?

 コーザの名前を語るあたり、十悪会か。

 もう来たのかよ。

 フットワークが軽いな。


「あぁ。まぁ、お前達如きには殺られねぇけどなぁ! アーク!」


「うん! ミスト!」


 ゴロツキの集団を霧で包む。


「アークは一人一人始末しろ! 俺とドンガは、正面から叩く!」


「わかった!」


「やるんだな!」


 ジリジリと正面から詰め寄っていく。


「前が見えねぇ!」


 敵は混乱しているようだ。

 何人いるか分からないがかなりの数がスラムになだれ込んできているようだ。


「エアバレット」


 空気弾をばら撒く。


「ぐわぁぁ!」「なんだ!」「いてぇぇ!」


 コイツらには容赦はしない。


「ドンガ、突っ込むぞ!」


「分かったんだな!」


 盾を構えて霧の中に突っ込んでいく。


「うおぉぉぉぉ! シールドクエイク!」


ドガガガガガガガァァァァァンッッ


「「「ぐわぁぁ!」」」

「「「がぁぁぁ!」」」


 複数人を巻き込めたようだ。


「アーク! 解除!」


「うん! 解除したよ!」


 霧が晴れる。

 手前には地面にのたうち回っている者が多くいた。


「後は乱戦だ! 負傷したら下がれよ!?」


「うん! いっくよぉ! ダークミスト!」


「行くんだな! シールドクエイク!」


 俺を囲むように敵が陣取ってくる。


「エアスラッシュ」


 半月上の空気を横に圧縮して放つ。

 これで前方は空いた。


「エアボム」


ドガァァァンッ

 

 圧縮した空気を無理やり圧縮しまくり爆発を起こさせる。

 位置を指定できるので使えそうだ。


 爆発の衝撃で人が舞っている。


「くそぉ! こんなはずじゃ……」


「お前らさぁ、人数多くしたって雑魚は雑魚なんだからよぉ」


 敵に忠告をしていると、焦った声が聞こえてきた。


「ここは通さないんだな!」


 ドンガが盾を手放している。

 腕を負傷したようだ。

 後ろまで押し込まれたのか。


 必死に身体を張っているが押されている。

 後ろにはマリアがいた。


「エアウォーク!」


 空に跳ぶ。

 上空からドンガの前に舞い降りる。


ザシュッ


 ドンガに攻撃していた敵はもう動かない。


「よく守ったドンガ」


「オデだって守れるんだな!」


「あぁ! カッコよかったぞ! 回復してもらうんだ」


 後ろのマリアの元に行かせる。

 そうこうしている間に敵が大勢並んで迫ってきていた。

 スラムを人が埋めつくしていた。


「はぁ。一体何人連れてきてんだよ!」


「キリがないね」

 

 影から姿を表したのはアークであった。


「スラムのみんなは避難したか?」


「もう誰もいないよ」


「じゃあ、いいか。一発デカいの行くわ」


 手を敵に翳す。

 周りの空気が手の前に集められる。

 空気の流れがそこに吸い寄せられていく。


ギューンギューンギューン


 と音が聞こえる。

 空気を圧縮している音だ。


 うーん。

 もう少し大きい方がいいか。

 道幅くらいの大きさの空気にすれば、奴らを一掃できる。


ギューンギューンギューン


 もういいかな。

 回転を加えて。


シュルシュルシュルシュル


 その塊の後ろの空気を別で圧縮し、爆発させる。


「エアーキャノン!」


 ブワッと空気が一瞬震えた。


ズドォォォォォォンンンンッッッ


 前にいた人は一瞬で居なくなった。

 そして少しだけ残っている打ち漏らした人用に。


「爆ぜろ」


 ドガァァァァァァァァァァァンンンッッッ


 あー。

 これやり過ぎたな。

 スラムが跡形もなくなっちまったわ。

 まぁ、片付いたしいいか。


「ねー。クーヤ?」


「ん? 片付いたな! よかっ─────」


「バッカじゃないのぉ!? どう見てもやり過ぎでしょうが!」


 凄い剣幕で怒鳴っている。


 アークとドンガに視線を向けて助けを求めるが、首を横に降っている。

 どうにも出来ないということだろう。


「だいたいねぇ、もう少し加減して────」


「マリア、追っ手が来ないうちに逃げよう! 家も無いし、街を出るぞ!」


「えっ!? そんな急に……」


「マリア、行こう!」


「早く行くんだな!」


「わ、わかったわ!」


 アークとドンガが上手く援護してくれたようだ。

 二人に向かってサムズアップする。


 音を聞き付けた冒険者達が集まっていた。


「おい! もしかしてこれお前らか?」


 声掛けてきたのはネイサンさんだった。


「いやー。もう十悪会の奴らが復讐しに来まして、人数多かったんでデカいのぶっぱなしちゃいました」


「なっ! ハァーッハッハッハッ! 流石クーヤだぜ! 規格外ヤローが!」


 バシバシ肩を叩いて笑っている。

 すると、真面目な顔になって忠告してきた。


「早く出た方がいい。街のお偉いさんがお怒りみたいだ。十悪会については謎が多い。元を叩かないと恐らくずっと狙われる」


「わかりました。では、また会いましょう」


「あぁ、どこかでな!」


 手を振って街を出る。


「街を出たはいいけどどこに向かう?」


 アークが心配そうに聞いてきた。


「取り敢えず西に向かう。後は、俺が上空から明かりを探すから見つけたらその方向に行こう」


「うん。分かった」


「エアウォーク」


 上空に上がっていく。

 西の方を見ると小さく灯りが何個か見えた。


「西に行ってから少し北に行くと街があるみたいだ。今日は暗い中無闇に歩くのも危険だし、野宿するしかねぇな」


 少し行くと開けた場所に出た。


「今日はここで寝よう。マリア以外交代で見張り。アーク、俺、ドンガな」


「分かったよ! じゃあ、おやすみ!」


 地面に横になるとすぐ寝息を立てた。

 どこでも寝れるのも訓練の賜物だ。


トントンッ


「交代だよ」


「お疲れさん。おやすみ」


「うん。おやすみー」


 夜空を見上げながら考える。

 今日は奴らはもう来ないだろうが、明日以降がどうなるかだよなぁ。


 空き時間に魔法の使い方を考えることにしたのであった。


 空気をどう使うか。

 これでかなりなんでも出来る気がするのだ。

 火があれば水素だけ集めて爆発とかもできる。


 自分の周りの空気を後ろにずっと逃がしたら、攻撃が全部後ろに行くんじゃないか?

 はははっ!

 それは無敵だ。


 そんな事考えていたら、見張り交代の時間が少し遅れたのであった。


◇◆◇


 朝起きるとまず、街に向かうことにした。


「まず街に向かって飯を調達しよう」


「うん! もう僕お腹ペコペコだよ」


ギュルギュルギュル


「僕もお腹空いたんだな」


「私もぉ」


 次の街まで少し距離があったのだ。

 森の中を方向を確認しながら歩いていく。


 二時間くらい歩いただろうか。

 目視できるところまで来た。


「あれだ!」


「あー早く食べたい!」


 少し駆け足になる。

 入口に着くと大きな街であった。


 中に入っていく。

 屋台が並んでいた。


 串焼きの店がいい匂いをさせていた。


「おっちゃん! これ八本ちょうだい!」


「あいよ! 兄ちゃん達冒険者かい?」


「あぁ。そうだ」


 顔を近づけて来た。


「(ボソッ)あんまりデカい声で言えねぇがな、この街の領主さんには気をつけた方がいいぞ」


「(ボソッ)何かあるんですか?」


「(ボソッ)冒険者を集めて好き放題やってんのさ」


 串焼きを受け取ると。


「ありがとう! おっちゃん!」


「またきな!」


 串焼きをみんなに分けて持ち、路地裏に入る。

 人がいないことを確認すると。


「みんな、この街の領主が冒険者を集めて好き勝手やってるそうだ。俺達は関わらないようにしよう」


「どこでその話を聞いた?」


 見知らぬ声が後ろから響いた。

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