第8話 討伐戦
「ぐわぁぁぁ!」
「コイツ攻撃効かねぇ!」
逃げ惑う冒険者達。
「ハッハッハァーーーー! 弱え弱え!」
ザシュッ
「がぁぁ!」
また一人冒険者が倒れた。
阿鼻叫喚の様相であった。
時は遡る。
◇◆◇
「今回の盗賊って強いんですかね?」
俺は歩きながらネイサンに聞いてみた。
「うーん。俺の経験上、凶悪な盗賊っていっても魔物には劣るっつう認識だな」
「ですよねぇ」
「まぁ、行ってみなきゃわからん。気をつけろよ?」
「はい!」
午前中一杯歩いていた。
すると、見えてきた。
廃村だが、所々修復したりして十数の建物が使用されているようだ。
「エアボイス」
『聴こえますか? 聴こえてたら頷いてください』
魔法部隊の人達が頷く。
「クーヤ、何した?」
「声を届けています。これで指示を出します」
「すげぇな」
『静かに村を等間隔で囲みましょう』
皆で取り囲む。
そんなに大きい村ではない。
すぐに囲んだ。
「ネイサンさん、準備出来ました」
「よし。やれ」
『打て!』
「エアバレット!」
「ミスト!」
「アースクエイク!」
村を濃霧が覆い大きく揺れる建物。
そこに炎、風、水、土。
色んな魔法が突き刺さる。
ズドドドドドドォォォン
まだ人が出てくる気配はない。
『二射目! 打て!』
ズドドドドドドォォォン
「クソガァ!」
「何してくれてんだよ!」
「ふざけんなコノヤロー!」
続々と盗賊が出てきた。
「ネイサンさん、出番です」
「任せろ! 野郎共、行くぞ!」
「「「「おう!」」」」
ストロンガーの面々が先陣切って向かっていく。名前にふさわしく、屈強な男達の集まりだった。
剣を持つ人も居たが、拳で戦う人が殆どだった。
「オラァァ!」
「クタバレゴラァァ!」
「かかってこいやぁ!」
冒険者の野太い声が聞こえる。
そんな中俺は、遠くから冷静に見ていた。
『盗賊を狙える人は狙って仕留めましょう』
コクッと魔法部隊の人が頷く。
少しずつ盗賊が減ってきた。
俺も加勢しよう。
「ターゲットロック。トラッキングエアバレット。」
盗賊をロックし、自動追尾の空気弾を放つ。
次々殺られていく盗賊達。
もう少しで討伐完了と思われたが、奥の家から出てきた大男が問題だった。
「なぁにやってんだ? ケッ! 雑魚共が!」
タラタラと歩いてくる大男。
「オラァ!」
剣を叩きつける冒険者。
だが、腕でガードされた。
何か仕込んであるようだ。
すると、大男が動いた。
「フンッ」
上から打ち下ろしの拳が突き刺さる。
ズドォォンッ
「ぐわぁぁぁ!」
「コイツ攻撃効かねぇ!」
逃げ惑う冒険者達。
「ハッハッハァーーーー! 弱え弱え!」
阿鼻叫喚の様相であった。
試しに魔法を打ってみる。
「エアバレット」
脳天目掛けて打つが。
パァンッ
「おぉ。危ねぇ。強えやつがいるな?」
頭は流石に攻撃が当たったら不味いんだろう。
腕でガードしていた。
すると、ネイサンさんが前に出た。
拳と拳での勝負になる。
「効かねぇわけがねぇだろぉ!」
ネイサンさんの拳が鳩尾に刺さるが、全く効いていない。
「効かねぇなぁ」
ドゴォォォッ
「グフッ! クソッ!」
顔面に拳を叩きつけようとするが、ガードされた。
「弱え!」
盗賊のハイキックが突き刺さり、倒れ込むネイサンさん。
盗賊の頭だろうか。
強さが規格外のようだ。
「何なのあいつ!?」
「強いんだな!」
アークとドンガが狼狽えている。
こちらに近づいてくる。
「大丈夫だ。俺が守る」
前に出る。
「エアバレット」
パンパンパァンッ
空気弾を打つが全部弾かれる。
「これでどうだ? バキューム」
敵の親玉の頭周りを真空状態にする。
真空になっているから息が出来ないはずだが、そのまま突っ込んでくる。
「はぁ。やるしかないか」
ヌラッと剣を構える。
振り下ろされる剣を受け流す。
体制を崩した親玉にバックスピンキックをお見舞する。
ニッと笑う親玉。
不気味な笑みを浮かべている。
「効いてねぇか?」
魔法を解除にし、剣術に集中する。
「おっ! 息できるじゃねぇか! お前面白ぇな!?」
話しながらも拳を打ち下ろしてくる。
スッと避け、切りつける。
ズシュッ
服が切れただけだった。
切れ目から見えるのは鉄の鎖のようなもの。
ん?
鎖帷子か?
そういう事かよ。
そりゃ物理はなかなか効かねぇわ。
魔法も弾くから何か特殊な加工がされてんだな。
「やるじゃねぇか! まだまだぁ!」
拳を繰り出してくる。
当たらないように大きめの動作で避ける。
「エアバレット」
再び頭を狙う。
「おっと!」
首を捻って避けられる。
頬に一筋の傷がついた。
「ハッハッハッ! 俺に傷をつけた奴なんて久し振りだぞ! 俺はなぁ、十悪会のもんだ。十悪のベガ様の一の子分、コーザだ!」
「そうか」
「なんだよ冷てえな。お前! 名は?」
「はぁ。アイアン級、ロストライブのクーヤ」
「覚えたぜ! 楽しくやろうぜ!」
拳をブンブン回している。
「ふぅ。かかってこい」
剣を納刀し、拳で戦うことにした。
スピードについて行くにはそれが一番だろう。
「ハッハァー! いいね!」
突如上に跳躍し、拳を叩きつけてきた。
咄嗟に後ろに飛ぶ。
追うように再び前方に跳躍してくる。
今度は膝蹴りだ。
腕を交差して受ける。
ズドンッ
くぅ。
重い。
足を掴み、地面に叩きつけるように投げる。
ズドォォォンッ
「いててて。まさか俺を投げるとは」
大男の為自分が投げられるとは思っていなかっただろう。
起き上がったところを狙う。
「フッ!」
目の前に肉薄して拳を突く。
首をひねって避けられるが、すぐに拳を引いてハイキックを放つ。
ズンッ
両手で受け止められる。
足を引き、クルッと回転してバックスピンキックを放つ。
得意のコンビネーションだ。
同じ攻撃は効かないとばかりに余裕のコーザ。
「バイブレーション」
足の周りの空気を震わせる。
「これでどうだ!」
ズゥゥゥゥゥンッッッ
振動はコーザの体内を暴れ回り内部からダメージを与えた。
「ゴフッ」
コーザが血を吐く。
「やるねぇ」
ニヤッと笑ってまだ立っている。
いやいや。
なんで立ってんだよ。
「いい加減くたばれよ」
「やってみろ!」
また拳を繰り出してきた。
全体重をのせた攻撃だった。
躱して懐に潜り込み、掌底を構える。
「バイブレーション」
掌底を引き絞り、突き出す。
「ハァァ!」
ズドォォォォンッッ
コーザの身体が宙を舞う。
大の字になり地面に転がる。
ピクリとも動かなくなった。
「ふぅぅぅぅ。割りと手こずったな」
「クーヤ凄い!」
「流石なんだな」
「怪我はない?」
アークとドンガが賞賛してくれる。
マリアには心配かけたようだ。
「実は……振動させた足と腕が痺れててな。人体に使うもんじゃなかったわ……」
「何やってんのよもう! こっち来て座って!」
凄い剣幕で怒っているため、言うことを聞かざるを得ない。
「あっ、はい……」
「右手と右足?」
「そうだ」
「痺れよ、良くなれぇ! 痛いの痛いの痛いの飛んでいけー!」
パァァァっと身体が光を放った。
「おぉ。痺れがとれたよ。流石マリアだな? ありがとよ」
「まったく……無茶しないでよ?」
「約束はできないけどな」
「もう」
呆れられていると、生きていた冒険者は集まってきた。
「はっ! クーヤ、お前やっぱすげぇわ」
ネイサンさんであった。
気を失っていたようだが死んではいなかった。
冒険者の中でもそれなりに犠牲は出たようだ。
「何人生き残りました?」
「ここに居るやつだけだ。十人位か……俺のパーティーも一人犠牲が出た」
「すみません。最初から俺が────」
バシッと頭を叩かれる。
「それは言うな。みんな命張って戦った結果だ。みんな覚悟の上だった」
「はい……そうですね。すみません」
「まぁ、お前のおかげで被害は最小限だ。胸を張れ!」
「はい!」
「まさか、十悪会が関わってるとはな……」
「なんか不味いんですか?」
「クーヤ、お前気を付けろよ? アイツら悪の限りを尽くしてくるし、復讐もしてくる」
「気を付けます」
「じゃ、戻って報告だ」
皆で街に戻り、報告をする。
固定の報酬一ゴールドに加えて十悪会の手下を倒したということで二ゴールドが追加されたのだった。
こうして討伐作戦は終わりを迎えた。
そして、ここからが十悪会との長い闘いの始まりになるのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます