第7話 盗賊討伐隊結成
各々の力がわかってから魔法の練習をするようになった。
依頼も少しずつ受けて順調に冒険者として成長していた。
そんなある日、ギルドの受付で声をかけられたのだった。
「ねぇ、君たちは盗賊討伐隊に志願しないのぉ?」
「盗賊討伐隊?」
「えぇ。エントリーして討伐に参加しない? 参加すれば報酬も結構貰えるわよ?」
んー。今のみんなの実力ならそんなに簡単にはやられないだろう。
盗賊如きどうにでもなる。
「参加します」
俺が言うと受付の人がニコッと笑って頷いた。
「君達なら、きっと大丈夫。それじゃあ、エントリーするからパーティ名教えてくれる?」
「僕達はパーティ名はないよねぇ?」
アークが困ったように言う。
「オデ、名前なんて付けれないんだな」
「私もちょっと……」
ドンガとマリアも苦手なようだ。
「なぁ、俺が決めてもいいか?」
「何か候補があるの?」
アークが目をキラキラさせている。
「すみません。パーティ名は、『ロストライブ』でお願いします」
「ふふっ。いいパーティ名ね」
「ありがとうございます」
受付嬢はパーティ名の意味を知ってか知らずか名前を褒めてくれた。
「じゃあ、明日の朝八つの鐘が鳴ったら説明を始めるわ。遅刻しないでね?」
「はい! わかりました!」
ギルドを後にすると。
「ねぇ、さっきのどういう意味なの?」
アークが不思議そうに聞いてきた。
「ハズレが古代語でロストなんだ。それでトライブは部族っていう意味がある。繋げてロストライブってわけ」
「へぇ。古代語なんて知ってんだね? 凄いなぁ」
アークが感心している。
実は古代語なんぞ知らん。
英語のことを適当に誤魔化した訳だ。
でも、受付嬢は不思議と意味がわかっていたようだ。
もしかして、ホントに英語が古代語だったり?
「ねぇ、今日は依頼受けるのかしら?」
「いや、盗賊を相手にすらなら装備を少し整えよう。俺が金は出す。少し防具と予備の武器を買おう」
「全部新調してもいいんじゃない?」
アークが不思議そうに聞いてきた。
「いや、武器が馴染まないうちは使用感に違和感があるはずだ。だから、使えるうちは今の武器をメインに使ってた方がいい」
「なるほどねぇ」
「じゃ、まずは防具かな?」
この日は防具と武器を買うことに時間を使ったのだった。
◇◆◇
次の八つの鐘がなる頃ギルドには沢山の人が集まっていた。
三十人程は居るだろうか。
スッと台の上に上った人がいた。
あの人がまとめるのかな?
「集まってもらって感謝する! ギルドマスターのマイクだ! 今回は盗賊を討伐する為に集まってもらった! 報酬は固定で一人一ゴールドは支払うことを約束しよう」
「「「おおぉぉぉ」」」
一ゴールドは大体普通の人が1ヶ月程生活できるくらいなのだ。
「凄いね!」
アークが興奮して目をキラキラしている。
盗賊如きの討伐にこの人数な上にそんなに報酬を出すだと?
一体何を企んでる?
「アーク、ドンガ、マリア、これはちょっと厄介かもしれねぇぞ?」
「どうして?」
マリアが代表して聞いてくる。
「普通は小規模の盗賊の討伐には冒険者が一パーティ居れば事足りるんだ。なのに、今回集まったのは三十人あまり。それに高い報酬。相手が厄介かもしれねぇ」
それに関して怪訝な顔をしていたのは俺たちだけではなかったようだ。
「そんな顔をしないでくれ! 騙そうってんじゃない! ただ今回の盗賊は凶悪だという情報が入っている。殺人、強盗、人身売買、誘拐。奴らのやった事の例を挙げれば色々と出てくる。それだけ危険だということだ! 今ならまだ辞退できる! 辞退するものは手を挙げてくれ!」
マリアが不安になった様で見つめてくる。
「今回はいい勉強になるだろう。皆は俺が守る。しかし、無理強いはしない。どうする?」
「オデは、クーヤだけ行かせないんだな。オデも行くんだな」
「僕だって行くよ。クーヤ一人を危険な目には合わせられない。もう家族も同然でしょ?」
「そうよ。一人だけなんて行かせないわ。それに、クーヤが居れば安心だもの」
皆参加を表明する。
「みんな。よしっ。やろう」
他のパーティーも話し合いは終わったようだ。
残るパーティーは居ないようで、全員参加の意向を示した。
「全員参加でいいな!? では、盗賊の本拠地は調査したところここから北に行った森の中の廃村を根城にしているようだ! この人数だ。囲んで魔法を打つのが有効だと思うが……」
スッと手を挙げた者がいた。
「いいぞ。質問か?」
「あっ、ブロンズ級、ストロンガーのネイサンだが、うちは物理特価で魔法が打てるやつがいないんだ。みんながみんな魔法が使えるわけじゃないなら、違う戦法の方がいいんじゃないか?」
「んー。確かに、人を無駄にはしたくないな」
スっと手を挙げる。
「おっ、なんかいい案か?」
「あー、アイアン級、ロストライブのクーヤですが……」
「あぁ? アイアンがでしゃばんなよ?」
金髪を逆立ててアクセサリーをジャラつかせている男が睨みつけてきた。
「いや、今はランクは関係ない。有効な作戦なら聞こう。いいぞ! 話してみろ!」
ギルドマスターは俺の意見を聞いてくれるようだ。
「はい。あのー魔法を打てる人は廃村の建物目掛けて打つのはいいと思うんです。ある程度数が減らせればその方がいいですし、そうすることで敵はこちらに向かってくると思うんですよ……」
「なるほど。こちらの有利な場面で戦えるということだな?」
「はい。建物の中は狭いし敵が大勢いるでしょう。でも、外に出してしまえばこっちは味方と協力して一掃すればいいじゃないですか。あっちから向かってくれば魔法無しの人たちも迎え打てるし、魔法が使える人が援護もできます」
「そうだな。それで行こう。ある程度数を減らして建物に突入した方がこちらがフリにはならないな?」
「えぇ。そうです」
「クーヤ、ホントにアイアン級か? 落ち着いてるし、大したもんだな」
「ありがとうございます」
「チッ!」
再びジャラ男が睨みつけてくる。
ここは関わらないように無視しておこう。
そちらに視線が行かないようにしよう。
まっすぐ前を見る。
「今回はクーヤの作戦で行こう! 全体はネイサン、君が指揮を取れ」
「あぁ。了解だ」
「で、魔法部隊はクーヤが指揮を取れ」
「えっ!? 俺でいいんですか?」
「ランクは関係ない。俺はクーヤが相応しいと思った。無理か?」
「いえ! やらせてもらいます!」
「よしっ! では、討伐頼んだぞ!」
「「「「おう!(はい!)」」」」
説明が終わるといよいよ討伐に向かうようだ。
先程のネイサンがやって来た。
「よぉ。クーヤ、ネイサンだ。宜しくな」
手を差し出してきた。
「未熟者ですが、宜しくお願いします」
ガッチリ握手をする。
「いや、この人数でアイアン級のお前が意見が出来るってのは肝が据わってるって事だ。クーヤ、雰囲気もだが、どんな修羅場を潜ればそうなる?」
ネイサンから見たクーヤは歴戦の猛者を思わせる雰囲気が漂っていた。
「あー。師匠に扱かれまして、何回死を覚悟したことか分かりません……」
ブルッと身体が震える。
修行中のことはあまり思い出したくない。
あれはトラウマになる。
「はははっ。期待してるぜ。お前あれだろ? 冒険者登録の時にシルバー級の試験官を剣術と体術のみで圧倒したっていう。それが魔法も使えるんじゃすげぇわ」
「ん? あの時は試験官の人が手を抜いてくれてたからですよ。大したことないですよ」
ネイサンは実は試験官をした男から話を聞いていたのだ。
『アイアンの青い髪の奴には気をつけろ。奴は化け物だ』
と言っていたのだ。
「そうか。まぁ、楽しみにしてるぜ」
「はい! 頑張ります!」
こうして三十人あまりの討伐隊はゾロゾロと出発したのであった。
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