第6話 それぞれの個性
パーティーを結成した次の日、早速依頼をこなくすことにした。
「おしっ! 今日から依頼をこなして行くぞ!」
「はい!」
「うん!」
「わかったんだな!」
勢いよくギルドに向かっていく。
中に入り受付に受けれる依頼があるか聞く。
「すみません! 依頼受けたいんですけど!」
「ごめんなさい。アイアンの今日の依頼はもう全部受注されてしまったわ。だから常設の薬草と毒消し草、それからゴブリンの討伐しか無いわね」
「わかりました」
去ろうとすると。
「待って! ねぇ、もしかして、パーティー組んだの?」
「はい! コイツらと一緒にやることにしました!」
「その子達ってスラムにいる……」
「はい。たまたま縁あって、パーティー組むことにしました」
「そう。頑張ってね!」
「はい!」
ギルドを後にすると街の外でへ向かう。
「ゴブリン相手だと丁度いい練習になる。魔法を活用して見よう」
「うん! やるぞぉ!」
「オデもやるんだな!」
「もしも怪我した時は任せて!」
街の外に出て森に入っていく。
「ソナー」
「なんの魔法を使ったのぉ?」
不思議そうにマリアが聞いてきた。
「索敵の魔法だ。これで、ゴブリンが居れば反応が帰ってくる筈だ」
しばらくすると。
「いた。少し奥だがここから百メートル程行くとゴブリンがいる。まずは、アークからやってみるか」
「う、うん」
「大丈夫だ。まずは、ゴブリンの頭付近に霧を発生させるんだ。密度を濃くしろよ?」
「わかった」
少し行くとゴブリンが目視できた。
「行くよぉ! ミスト!」
ゴブリンの頭の周りに濃い霧が現れる。
頭は視認できない。
あちらからも見えないだろう。
「アーク、後ろに回ってそのナイフで胸を一突きだ」
「うん!」
後ろに回り込み慎重に近づく。
「グゲー!」
前が見えなくなって頭を抱えるゴブリン。
静かに胸に一突きする。
全体重を乗せてドンッとぶつかった様だ。
核に当たったのだろう。
サァっとゴブリンが魔力にかえる。
魔物は魔力の濃度が濃いと発生するようなのだ。だから、たまにできた魔力溜りで魔物が発生するというわけである。
「倒せた……」
信じられないことが起きたかのように手を震わせて呆然とする。
「倒せたな」
「クーヤのおかげだね」
「俺は、アドバイスしただけだから」
「一人で倒せたの初めてだよ!」
飛び跳ねて喜ぶアーク。
「良かったな」
「うん! 次はドンガだね!」
「オデは盾なんだな。たたかえるか?」
首を捻って怪訝な顔をしている。
「ドンガは単純だ。盾で殴り、インパクトの瞬間に盾から地震を発生させるんだ。そうすることで振動が身体につたわり倒せると思う」
「やってみるんだな!」
拳を握りしめてやる気をアピールしている。
「じゃあ、また探すぞ。……ソナー」
今度は五百メートル先に三体いる。
「次は群れてるが、問題ない。行くぞ」
四人で気づかれないように慎重に近づいていく。
「まず、二体は俺が始末する。……エアバレット」
パンパァンッ
二体のゴブリンの脳天に空気弾が突き刺さり霧散して魔素になる。
「ドンガ、行けるか?」
「行くんだな」
前にずんずんと進んでいく。
「グゲゲッ」
手に持っていた棍棒を振り下ろしてくるが、ドンガは冷静に盾で弾く。
「行くんだな。……シールドクエイク!」
シールドバッシュを放つ。
ズンッ
ゴブリンが少し震えたと思ったら魔素に変わっていった。
「ドンガも倒せたな」
「出来たんだな!」
「ドンガ、凄いじゃん!」
アークも一緒に喜んでいる。
突如、森が静かになった。
奥でズンッズンッと音がする。
「なんだ? ソナー」
反応が返ってきたのはこちらに向かってくるゴブリンより大きな反応だった。
「皆、ゴブリンキングが向かってきてる。ゴブリンキングはブロンズ級だが、力を合わせれば倒せるはずだ」
「うん! やろう!」
「やってみるんだな!」
「回復は任せて!」
全員でゴブリンキングに立ち向かう。
しばらく進むと見つけた。
「目視できたな。アーク、霧を」
「うん! ミスト!」
ゴブリンキングの頭の周りを霧で囲む。
「グゲッ? ゲゲゲッ」
頭を振り払うようにもがいている。
「チャンス! アーク! 行けるぞ!」
「うん!」
後ろに回りこみ一突きする。
ザシュッ
やったかと思った。
が、振り回していた腕に当たってしまった。
「ゲェェェーーー!」
さらに暴れ出す。
「ドンガ、抑えてくれ!」
「任せるんだな!」
盾で抑えに行く。
すると、錯乱して投げてきた棍棒が、上からドンガにたまたま当たった。
「うっ!」
「ドンガ! 下がれ!」
頭を抱えて戻ってきたドンガ。
「痛いんだな」
「私に任せて! 痛いの痛いの飛んでゆけー!」
ドンガの頭を光が包み込む。
頭を不思議そうに撫でているところを見ると治ったんだろう。
「ありがとうなんだな!」
回復を終わらせたが、打開策が思いついていなかった。
そんな中。
「俺が始末するか?」
「ううん! 僕とドンガがやるよ」
「オデもやるんだな」
「じゃあ、前と後ろから挟んでやってみよう!」
アークとドンガは頷きあってゴブリンキングに駆けていく。
「オデが前から抑え込むんだな!……シールドクエイク!」
ズゥンッッ
「グゲッ」
シールドバッシュを受けてゴブリンキングが動きを止めた。
「今だ!」
ザシュッ
後ろから胸を一突きした。
「グ……グ……ゲ…………」
ゴブリンキングは倒れながら霧散していった。
「や、やった!」
「オデ達やったんだな!」
「二人ともすごぉーい!」
三人が飛び跳ねて喜んでいる。
ホントに仲がいいな。
なんか……家族みたいだな。
感慨にふけっていると。
「クーヤのおかけだよ! ありがとう!」
アークが頭を下げてくる。
「お、おれは何も……」
「いや、クーヤのおかげなんだな! ありがとうなんだな!」
ドンガも頭を下げてくる。
「いいって! 頭を上げろよ! これからもっと強い魔物を狩るんだから、まだまだ皆で強くなるぞ!?」
「そうね! 皆で頑張りましょ!」
マリアがパンパンッと手を叩いてはい終わり、と告げる。
「よしっ。ゴブリン狩りは一先ず終わりにして薬草と毒消し草を採取して帰ろう」
「うん! 僕達採取は得意だよ!」
そう言うとアークはしゃがんでズボッと根っこごと薬草を抜いた。
「こうすると鮮度がいいんだ」
自慢げに胸を張って言っているが、それは間違っているんだ。
「アーク、根っこごと抜くと薬草はどうなる?」
「ん? 鮮度がいいって……」
「そうだが、根っこから抜くともう生えてこなくなっちまうだろ?」
「えっ?……あっ、そうか」
「そう。薬草や毒消し草は常に需要がある。だから、根絶やしにならないように、根っこを残して……」
薬草の根っこ近くをナイフでピッと切る。
「こうするのが最低限の鮮度も保てるし、採取したあともまた生えてこれるんだ」
「なるほど……」
「オデも知らなかったんだな」
「そうよね。私も知らなかった。根っこから取るのがいいと教わったわ」
「昔はそうだったみたいだけどな。余りに取りすぎて一時絶滅しそうだったんだ。だから、今はこのやり方が主流なんだ」
「クーヤは物知りだね!」
「師匠から教わった受け売りだけどな」
「師匠がいるの?」
「あぁ。かなりだらしが無くて口が悪い人だけどな。俺は小さい頃からその人に育てられたんだ」
「僕達はずっと三人でスラムで育ったから、師匠みたいな人はいないんだ。あっ、それで言うと、クーヤが師匠だね?」
「なっ! よせよ! そんなのガラじゃねぇって!」
「あははっ! いーじゃない! 師匠?」
「止めろって……さぁ、行くぞ!」
俺は、師匠と呼ばれるほど強くはない。
まだまだ未熟だ。
これからもっと強くならないとな。
でも、コイツらとなら強くなれそうだ。
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