第5話 みんなハズレ?

 まずは、拠点が必要だな。

 コイツらをスラム街から出す。


「まずは、金稼ぐのも必要だけど、詳細に何ができるか聞いてもいいか?」


「ぼ、僕は……」


「あぁ。すまない。自分からは話しづれぇよな? 俺はな、フォースの風の貴族の生まれだ。ハズレとされている空気属性だからという理由で捨てられた」


「えっ!? でも、オーガを魔法で倒したって……」


「そうだ」


バンッ


 岩に風穴を開ける。


「こんな風に殺傷能力は十分だ」


「すごい。僕は水の貴族だった。霧属性だったから捨てられたんだ」


「はぁ? そっちは霧がハズレだと?」


「うん。そうなんだ」


「でも、霧で目隠しすれば暗殺が可能だと思うんだけどな」


「暗殺……」


「あぁ。考えたこと無かったか?」


「うん。思いつかなかったよ」


「ナイフとも相性いいし。魔物相手に練習してみよう」


「うん」


 次はドンガだ。

 視線を送ると。


「オデは土の貴族のハズレ、地震属性なんだな」


「おいおい。それぞれの貴族でハズレがあったのか?」


「知らなかったんだな?」


「あぁ。知らなかった……。しかし地震がハズレ?」


「そうなんだな。岩属性は岩を生成して戦えるから、重宝されるんだな」


「ふーん。ちょっと今使えるか?」


「いいよ。外でやるんだな」


 四人で外に出る。


「いくんだな……地よ、身を震わせろ アースクエイク」


 半径3メートル辺りが少し揺れる。

 10秒程で止まる。


「こんなもんなんだな。つかえないんだな」


「いや、地面に作用できてるのがすげぇ。後は、イメージが足りないだけだと思う」


「イメージ? 地面が揺れるだけじゃないんだな?」


「実はな……地震っていうのは、簡単に言うと岩盤がズレることで地面が揺れる現象なんだ」


「岩盤が……ズレるのはどういう事なんだな?」


 そう言われても分かんねぇよな。

 手を使って説明する。

 Y字の様に手を作り段々と中心に寄せていき上に弾く。


「岩盤がこう弾かれて地震が起きるんだ。何となくわかったか?」


「あぁ。それならオデでも少し理解出来たんだな」


「なら、イメージは出来てるな。それができたら詠唱いらないぞ?」


「わかったんだな! ……アースクエイク」


 ゴゴゴゴゴゴ……


「うおっ!」


「立ってるのもしんどいんだな!」


 四つん這いになって止まるのを待つ。

 暫くすると止まった。


「凄い……イメージだけでこんなに違うんだな……」


「なっ? 使えないことないだろ? おれはまだ使い道考えつくけどな。それはまた今度にしよう」


「凄いんだな!」


「まずは、ランクを上げて稼げるようになろう! 実践訓練にもなるし!」


「なんか、僕、クーヤとならできそうな気がして来たよ!」


 興奮したようにアークが立ち上がった。


「オデももっと色々と教えて欲しいんだな!」


「私はもっと回復を頑張る!」


「マリア、すまんな。俺は、回復魔法が壊滅的に出来なかったんだ。だから、教えることはできないが、頼る事になると思う」


「はい! ドォンと任せなさぁい!」


「まずは、ランクアップを目標としながら金を稼ごう。俺もここを拠点にしていいか?」


「もちろんだよ!」


「ある程度の金はあるんだが、金は取っておいた方がいいだろう。野営道具を買ってくる」


「うん! あっ! 私案内するよ!」


「おう。すまんな」


 スラム街を出てメインの道に着く。


「あっ、野営道具は雑貨屋さんになるんだぁ。こっちよ!」


 マリアが先頭を歩いていく。

 道行く人がたまに振り返る。

 マリアが可愛いからだろう。


 そして修道服のような服を着て、出るところが凄く出ているからだろう。

 後ろから見るスタイルも凄くいい。


「ねぇぇぇ? あんまりジロジロ見られると恥ずかしいぃよぉぉぉ」


「す、すまん!」


 目が泳いでしまう。


 まさか見てたことがバレていたとは。

 女は鋭いな。


「ふふふっ。命の恩人ですから、許してあげましょう!」


 笑顔で許してくれた。

 笑顔が眩しい。


「ここですよ! こんにちわ〜」


「いらっしゃい! マリアちゃんどうしたの? なんか欲しいもの?」


「私じゃなくて、彼が欲しいものがあって」


「へぇぇぇ。マリアちゃんの彼氏? おまけしちゃうよぉ! 何が欲しいの?」


「いや、彼氏ってわけでは……あの、野営道具が欲しくて」


「まぁた、恥ずかしがっちゃって! 野営道具ね、こっちだよ」


 野営道具のある所に案内される。

 テント、寝袋、魔素を変換して使うコンロなどが並んでいた。


「おぉ。とりあえず一式下さい」


「良いのかい? まぁ、オマケして……二ゴールド五シルバーだけど……」


「はい。有難うございます」


 お金を麻袋から出して渡す。


「お金ちゃんとあるんだね」


「ははは。マリア?」


「えーっと……いつもオマケしてもらってて……」


「そういう事か。まぁ、これからは普通に買えるようになるさ」


「うん! オジサン今度来た時はいっぱい買うね!」


「ハッハッハッ! 嬉しいねぇ! 頑張んな!」


 雑貨屋を後にする。


「今日は俺が飯をご馳走しよう」


 そう言って屋台で夜ご飯にいい物を探す。

 メインストリートには屋台が並んでいる。


「マリアは何が食べたい?」


「えっ!? 私? 私は……」


 視線の先にはクレープ屋さんがあった。


「はははっ。正直だな。いいよ」


「ホントォ!? ヤッタァー!」


 クレープを買って渡す。

 ここのクレープはバナナチョコ一種類しか無いのだ。


「はい。クレープ。アークとドンガは何が好きなんだ?」


「んー。そうねぇ。アークはチーズはさみパンね。ドンガは……肉はさみパンかな」


「おう。わかった」


 自分もはさみパンを買い、一緒に元に戻る。


「そういえば、アークとドンガとはどこで知り合ったんだ?」


「スラム街で」


「アイツらも最初からスラムに居たのか?」


「うん。それで、冒険者してお金稼いでるって言うから、皆でやろうって話になって」


「ふーん」


 スラム街に入ると食料を持っているからだろうか。他の人からの圧がある。


 すると、痩せた大人の男三人組に囲まれた。


「おい。お前、見ねぇ顔だな? ここ通りたかったら、それ置いていけ」


「私のことは知ってるでしょ!?」


 マリアが身を乗り出して抗議するが。


「はっ。お前と一緒にいるヤツらがいつも俺達にも分けてくれるから通してるだけだ。じゃ無かったら、お前が欲しいからなぁ。好きなようにしたいぜぇ」


 舐め回すように見ている。

 マリアが体を抱えて俺に隠れる。

 頭をガシガシかいて答える。


「あー。お前らもうコイツとアイツらに手ぇ出すな。勿論何もやらねぇ。めんどくせぇ。どっちが上か分からせてやる」


「あぁ!? ガキがいきがんなよ!?」


「そうだぞ! どうなるか分かってんのか!?」


 手をくいっと動かす。


「かかって来いよ」


「テメェェェ!」


 三人が一斉に殴りかかってくる。

 前の一人を左に殴り倒す。

 二人目はハイキック。

 三人目は得意のバックスピンキック。


ドガァァァアァンッッ


 リーダー格の男の元に行く。

 髪を掴む。


「なぁ。どっちが上かわかったか? これでマリアとアークとドンガに何かあったら、お前は蜂の巣のように身体に穴開けて死ぬ事になるぞ? わかったか?」


「ゴフッ……わかった……もう手出ししねぇ。勘弁してくれ」


「分かったらいい。マリア行くぞ」


 そいつらはそのままにして奥に行く。

 

 アークとドンガは物渡して上手くやってきたんだろうけど、俺が来たからにはそんなの必要ねぇ。

 俺は、プラチナ級冒険者であるダンテさんに育てられた。

 俺もプラチナ級になる男だ。こんな所では負けねぇ。


 ダンテと長いこと一緒に居たため気質が写ったようだ。ダンテがちゃんと、育ての親だということだろう。


「クーヤ……あの人達大丈夫かなぁ?」


「あぁ。加減はした。大丈夫だろう」


「よかった」


 拠点に着く。

 アークとドンガに絡まれたが痛い目に合わせたと話す。

 もう手を出してくることは無いだろうと、そう言うと思ってたのと違う反応だった。


「あの人達も飢えてたんだ。だから分けてあげてたんだ」


「そうなんだな。あの人達、あの見た目だから何も仕事できないんだな」


「冒険者できるだろ?」


「あの人達……壊滅的に弱いんだな」


 思わず頭を抱えてしまった。


「わぁったよ! アイツらにも飯買ってくっから!」


 その後ビビりまくりの奴らを呼び出して飯を渡すと地面に頭を擦り付けて感謝されたのであった。

 

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