スケアカード

 ユリアが負けた。まあ、それはよい。俺はユリアを置いて何食わぬ顔してポーカー場を後にした。そして、目が覚めたらこのありさまだ。ポーカー台の席に座らされていた。

「賭け事は好きだが、無理やりやらされるのは好きじゃねえよ。」

 とりあえず、強がりを口にする。常にどんな立場だろうと強がってみせるのが男の世界の生き方だ。

「お前は景品だよ。ミセス・クワトリアのな。だから、黙って座っていればいいんだよ。」

「誰だよ、クワトリアって。」

 目の前にいたディーラーが会話に付き合ってくれた。こいつは好い奴だ。信用できる。

「わたしのことよ。ウダイ・ハキシム。」

 そう言って、登場したのはユリアだった。

「買われたのかよ。いい様だな。お似合いだよ、ビッチが。」

「あんたよりマシよ。だってあなた、わたしのために強制参加させられてんだから。」

「これはお前の仕業かよ。ふざけろ!!俺は出ていく!」

 そう言って席を立とうとした俺の背中に銃口が押し付けられた。

「お客様。一度でも席に着けば逃げることは許されませんよ。ここはマーダーショップ。人の命をチップに変えるポーカー場でございます。」

 マーダーショップ。実在していたのかよ。超高額レートで行われる伝説の裏ポーカー場。人を質に入れてチップに変えられるって噂も本当だったのか。

「わかったから。それで俺のチップはどうなってんだ?」

「ミセス・クワトリアがあなた様を買いました。それをチップにしていただきます。」

 テーブルを見渡せば俺も含めて5人いる。酔狂なことだ。あぁわかった。打ち手がいないからこんな野蛮な方法も許されるのか。クソが!数合わせで命かけなきゃならねえのかよ。

 俺は対面のユリアをにらんだ。しかし、それはどこ吹く風。いつも以上に楽しそうな顔をしたユリアがそこにいた。

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