6, 大切な幼馴染だから


だけど、エリカには遥か及ばなくても、僕だって何もしないで8年間過ごしてきたわけじゃないって示したかった。


だから、僕は鞄にしまってあったプレゼント用にラッピングされた小袋を取り出す。




「じゃあ、これは記念日兼、激励の品ってところかな?」



「これって、もしかして…」


「実は半年くらい前から、あそこのアクセサリー屋でバイト始めたんだ」

「時々僕が作ったりもしてて、まだ下手くそだけど、多分受け取ってもらえるくらいにはなってるから」



なんとなく照れくさくて、頭を掻きながら小袋をエリカに手渡す。



「わぁ、素敵!」


エリカは小袋に入っていた、白い加密列(かみつれ)の髪飾りを取り出す。


8年前にエリカにあげたものとほとんど同じデザイン。

もうあの髪飾り自体は販売していないので、過去の記憶だけを頼りに作った僕の自信作だ。




「今着けみてもいい?」


「良いけど、鏡が無いと位置とか分からなくないか?」


「じゃあコウちゃんが着けて!」


「分かったよ…」


少しかがんで、その髪飾りをエリカに着けてあげる。


今まで着けていたものと同じ白い加密列の花、デザインだって真似て作ったものだからそんなに違わない。


だけど、エリカが自分の作ったものを身に着けていると思うと、少しだけ得意気になってしまう。



「ありがと」

「……コウタ、背、伸びたね」

「少し前は同じくらいだと思ってたのに、なんか悔しい」



すると、エリカが僕の背中に手をまわして抱きついてきた。



「あたし、東京に行っても頑張るから、ずっと見ててね」


「うん」


「あたしが居なくても、コウちゃんもう泣かない?」


「当たり前だ、もう高校生だし」


「そこはもっと寂しがって欲しかった」


「まあ、ぶっちゃけ寂しい」


「良かった。最近距離感じてたから、嫌われちゃったのかと思った」


「絶対嫌いになんてならない、だって」



"エリカのことが好きだから"

僕は、そう言いかけて止まった。




「だって、エリカは大切な幼馴染だから」




「そっか、ありがと」




「ねえコウちゃん、今のあたしたち、どんな風に見えるかな?」


「また言わせるのかよ…」


「言いなさい」


「はぁ…えっと、…恋人とか?」


「ふふっ、照れちゃって。可愛い♪」



そう言ってエリカは僕の腕から離れる。



「あたし、絶対てっぺん取ってくるから!」



エリカは僕に向けてVサイン。




僕たち2人だけが覚えている大切な日。




夕暮れどきの空の真ん中で笑う君の横顔は、まるで晴れ空みたいだった。





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