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 「あ! 雪、それどっから持ってきた!」

 「ぶぅ〜っ! ばぁ! ばぁたあし! いやぁいやぁ!」


 やっと捕まえた雪の手にはかっぱえびせんミニサイズの袋。まただれかのお菓子をくすねたか⁉︎

 あわてて見回すと、どうやら小さな船室内の、


 『かもめのえさ 50円』


 から持ってきたらしい。


 「雪、これはお金払うんだ」

 「あぁ♬」

 するり、と、小さな手が目のまえに差しだされる。

 「…、」


 どうやら雪の実親はかなりイイ教育をしていたらしい。はやいとこあのオンナの教育? は忘れさせねぇとな…


 「ほら、雪、お金入れて」

 「あい!」


 小さな手が、お菓子の空き箱をアップサイクルした入金箱に五十円硬貨を入れる。たいして入っていないのか硬貨は、ぱさり、乾いた音を立てた。


 「よし、いい子だな。いいか、ほしいものはちゃんとにいちゃんにゆうんだ、それからだぞ?」

 「ぷんぷん」


 ぷんぷん、て、なんだよ。オレのせりふだよ。


 「ぱぱぁ! ままぁ!」

 「あ! まて雪、ゆ、…お、」


 船室からかけだした雪を追おうとして、さっき親に叩かれて泣きべそ描いていた男の子がこちらをのぞいているのに気がついた。


 「おまえも、かもめさんにエサやるか?」

 声をかけると小さく頷く。なんてしおらしいんだ…雪と足して割ってちょうどいいな。

 「ほら、」

 雪とおなじ、小さな手だ。

 かっぱえびせんの袋を渡して、

 「…ちょっとまて、おまえ、」

 その手を掴む。額に、大きな傷。さっき叩かれて、てとこじゃないだろう。

 「どうした、それ、」

 男の子の顔が豆鉄砲を食らった鳩みたいに真ん丸になる。

 若干十七歳の勘が告げる。


 ダメだな、この子をはなしちゃ、


 「ちょっと!」


 けど金切り声が船室に響いて、

 「あ、」

 男の子の身体が思いきりうしろに引っ張られた。


 ヤベ、


 親だ。

 ヤンママ代表みたいないでたちの若いオンナが、ギャン泣きする男の子を引っ張り上げていた。


 「勝手にいなくなんないでよ、マジむかつく!」


 引きずるように船室から連れだしていってしまった。


 まるで、オレの存在に気づかないみたいに。


 「ヤバいな、あれ」


 オレも船室をでると足早にパパを探した。

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