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「あら、ほらユキちゃん、お兄ちゃん、天くーん、」
雪はユリさんに抱っこされてご満悦に、なんと買ってやったえびせんを、じぶんの口に入れていた。
雪、それ、かもめさんのなんだぜ?
そのとなりでカイトもえびせんを食っている。おまえまで食ってどうすんだよ!
が、それどこじゃないんだ、
「パパ、パパは、」
「あら? パパ、さっきまで、」
「ちょ、探してきます」
いこうとして、
「うわぁぁぁぁあ」
「きゃぁぁぁぁあ! なにこれっ」
叫び声に足をとめる。見ると、
ピュイーーーーー
ピュイーーーーーヒョロロロロ
ピュイーーーーー
かもめじゃないっ
「わっ、すげぇ、」
カイト、喜んでる場合じゃないだろっ
「うきゃぁぁぁぁぁあ♬」
雪! おもしろがるんじゃない!
かもめなんかよりずっと大きくて質量のある…羽を広げた姿は人の丈ほどもある猛禽類が、束で、甲板船首側にいたカップルを襲っていた。
「ジョナサン、」
ユリさんが目を丸くする。
「あの子たち、パパの友だちなの」
うそでしょう!
「やだやだなにこれぇ!」
カノジョが騒ぐのに、カレシはことばもなく群がる猛禽類から我が身を守るしかできない。
ピュイーーーー
ピュイーーーー
もはやカレシの姿はジョナサンたちに囲まれて見ることができない。ジョナサンたちに突かれて、そのまま欄干を越えて海に落ちてしまいそうだ。
「エサを、手に持ったまま、あげようとするからよ」
「え、」
ユリさんは冷静だ。
「いやでも、あの人、落ちちゃいそうすよ、なんとか、」
「ニンゲンにはもう、なんともできないのよ」
ユリさんはそう、あっさりといってのけた。
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