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いつのまにか、背後にスタッフのおにぃさんがたっていた。
おじいちゃんのほかにもいたのかよ! 見回すけど、気づけばおじいちゃんは消えていた。
若いおにぃさんだ。二十代くらい。沖縄出身なのかな? て、顔立ちだ。
日焼けしたマッチョのおにぃさんだけど、イメージしていた、陽気で愉快なジョニーとはやっぱり違う。
特別な表情はなくて、ぼそぼそはなす。そして、小野さんやお巡りとはちょっと違う訛りがある。
「…妹さんの、ですか?」
て、店の奥ではしゃぐ雪に目をやって訊いてくる。
「あ、オレの、す。あの、おなじブランドで、おとな、ありますか?」
「…ないですね、」
「…すか、」
はなし、つづかない。
「あれは、女子ブランドなんで」
「え?」
なんて?
「ロキシー、女子モデルなんで、メンズはないですね」
「…すか、」
オレを見るおにぃさんの瞳には、一抹の哀れみが見てとれた。
いたたまれなくてロキシーのメンズブランド クイックシルバーのパーカーとディッカーズのパンツを手にレジに向かう。
会計をするとおにぃさんは、役目は果たした、といわんばかりにまた店の奥に引っ込んでしまった。
あの子、弟なんです、て、弁解するタイミングも与えてくれなかった。
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「カイト、ユリさんにクイックシルバーをすすめてきてよ」
「ユキちゃんは女の子だろなに着せようとしてんだよ変態」
おまえらこそ! なに着せようとしてんだよぉお!
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