ジョナサン

1

 「あっれー…」


 雪はロキシーキッズのかわいらしいピンクのダウンを着せてもらってご機嫌だ。

 (まんまと、ママとおそろいだ…)


 「おふね! おふね!」


 勇んで遊覧船 黒船号に向かってオレを引きずってゆく。


 かわいいけれどにいちゃんとしてはちょっと複雑だ。

 ジェンダーフリーの梅ちゃんにいったらすげぇ怒られそうだけど、男の子とわかったからにはやっぱり男の子の服を着せてやりたい。


 いっぱい食わせてたくましく育てねぇとな…


 「なに燃えてんの?」

 「燃えてるわけじゃねぇよ、決意してるだけだよ」


 だってあんな泣き虫になったら、


 やっぱり遊覧船駐車場の黒いワゴンRからでてきた小さな男の子が、父親らしき男に叩かれて泣いている。


 あんなんじゃ困る。殴られたら殴り返せるぐらいじゃねぇと男じゃねぇ。


 「まぁ、雪はオレがついてるからいいんだけどな」

 「ふぅん、」


 あわててお姉ちゃんがでてきて庇うけど、こんどはお姉ちゃんが母親に叩かれる。けど、お姉ちゃんは泣かない。


 「女子の方が強いんだ」

 「そっか…」


 ななみのことを考えると、なんだか納得した。

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