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「て、わけだから、オレはちゃんとさぁ、雪のにいちゃんなわけよ、な?」
ことの顛末をきくと梅ちゃんは、
「変態、」
「そうゆう顔すんなよ」
いかにも哀れ、みたいに顔を歪めた。
「邪な心が丸見えだろお前には任せらんないわユキちゃんかわいそうだ」
「うえちゃん♪」
「きゃぁぁぁあ♡ ユキちゃん、梅ちゃんちにお泊まりしようねぇ♡」
「おいおい、」
「しかもお前、避難するから公欠くれとか」
「仕方ねぇじゃん」
そうだ、仕方ない。
梅ちゃんもそれをわかっている。
雪の降る日、暗い部屋に放置されちまうようなチビの行末を。
「親といたらこいつ、死んじまうだろ」
ここは向ヶ丘工業高校…県下…いや日本のドン底。
梅ちゃんたちは一年間でじつに生徒の半数を行方不明、事件事故、貧困、で失う。
「こんなかわいいの、児相入れらんねぇし?」
児相につないでも、逃げだして消えちまうか児相に消されちまうかだ。
家によりつかないだけオレの親は優等生だ。
「雪は、オレが責任もって、守るよ」
あたりまえだろう?
にいちゃんなんだからな。
「オレの手からポッキーを食ったんだぜ?」
「そんなチビの手を、はなせねぇよ」
梅ちゃんはしばらく俯いて、ポッキーを食いちらかす雪の頭をなでていたけど、
「小さい子と生活するならお前、もうタバコ吸えねぇぞ」
「雪の身体に悪いなら、吸わねぇよ? にいちゃんだし」
「ふん」
やがて泣き笑いみたいな顔で鼻を鳴らした。
ドン て、オレの胸を小さな拳でつく。左胸の、少し上。
それからいった。
「Eddie would go」
そのことばの意味をまだ、オレは知らなかった。
*
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