白浜マリーナ
1
ボードを脇に海へ踏みだす。
「波、よく見て」
ヤンくんはいいながら、水平線から目を離さない。
踏み入れた足をシュワシュワ、崩れた波のかけらが、くすぐる。
波を透過した冬の朝の陽が揺蕩い足元で揺れる。
海の水は透明で、陽の光に発泡するガラスみたいだ。
「なかの方があったかい」
「そう、海水温は三ヶ月遅れだからいまが九月」
「温水プールみたい」
緩く腕に絡む海をかく。
「波乗りは、どう?」
「悪くない」
「くせになる、でしょ?」
「ワックスのかおりは、くせになる」
「違いないな」
海の懐に、なにも纏わず、なにの力もかりず、板と身一つで漕ぎだす。
それはたしかに、くせになる遊びに違いなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます