5





 けっきょく、服飾科総出(ても、定時課程には十人しかいないんだけど)で雪の服をつくってくれちまったのだった。


 いわないけど、いえないけど、しょうじき、ヤバい。


 ショッキングピンクのパジャマ…なんか眠らんねぇだろがっ。


 ゴジラの尻尾がついた部屋着やら、ウサギの耳がついたビーニーやら、こいつら着れないもんばっかつくりやがって…


 「ユキちゃん、こっち向いてー」

 「ユキちゃん、ポーズ決めてー

 やーん、かわいいー」

 「あい♬」

 「「「きゃぁぁぁぁぁあ(ハート)」」」


 パシャー パシャー


 それなのに…雪も着せ替え人形になるのもまんざらじゃないらしく、ねぇちゃんたちの黄色い声をあびてあざといポーズを決めている。


 オレのかわいい雪が…いや、ゴジラ尻尾の雪もかわいいけど…


 つか、こいつ何気にタラシだな。親父の影が見えるわ、やっぱ血が繋がってんのかな。




 ダウンやらリュックやらこいつらの手に負えないものは、担任 千葉ちゃんが、オレのタバコ指導中に東京まででて揃えてきた。

 「千葉先生、オレのは?」

 「なんでオレが天の服、買わなきゃなんねぇんだ?」

 「……、」


 *


 結局、オレが雪に与えたのは、雪がおいてかれた夜に必要になったパンツ(ファミリーマート)だけだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る