3


 *


 「あの、ユリさん、オレ料理できない、す」


 ぽんぽん食材をカゴに投げ入れてゆくユリさんにこっそり、そう告白した。

 「あら、大丈夫よ、」

 「いやあの、」


 オレも、包丁持つと、ひと刺しちゃうンす、よね。


 なんて、いえない。

 「いやあの、」


 「お兄ちゃんはユキちゃんのためなら、なんだってできるんでしょ!」

 「あ、いや、もちろん、です」


 もうカレーをつくるしかなかった。




 雪をしばしNHKにお願いして、

 「梅ちゃん、ヤベーわ」

 『大丈夫だろ、』

 「……、」

 なんといっても、包丁禁止令をだしたのは向ヶ丘工業高校生活指導部なのだ、何が大丈夫なのか。

 『お兄ちゃんはユキちゃんのために、』

 「…、」




 「もうひとを刺したりなんかしないんだろ?」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る