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 「よっし! 雪ははなれろよ」


 右手に包丁、左手にニンジン。


 「ヤバいな、こえぇ…」

 『包丁落とすなよ』

 テレビ会議でつないだスマートフォンの向こうから梅ちゃんが叫ぶ。


 *


 ユリさんから託された『カレーづくり』のミッションをこなすため、とりあえず梅ちゃんにLINEする。

 するとすぐさま、『オレが電話するまで包丁だすな』て、返信がきた。


 *


 で、絶賛オンラインお料理教室受講中だ。


 「いいじゃない! わたしもパパと付き合うまえにお料理教室、通いつめたの!」


 て、ユリさんは喜んでいたけど、レベルが違いすぎる。


 『野菜なんか切らなくていい!』てのが梅ちゃん流だ。


 ニンジン、じゃがいも、は包丁の背で軽く汚れを落として(それだけのための包丁だ)レンチンへ。柔らかくなった野菜はフォークで切れる。


 ちなみに玉ねぎは、『ユキちゃんにアレルギーがあるか調べてからがいい』て、ことで、今回は見送る。そのかわりトマト缶で旨味をだす、らしい。


 レンチンのあいだに、豚肉を沸騰した鍋に投入。

 『野菜入れるまえに、完全に火を通せよ』

 「っす、」


 「っし!…ニンジンから…」

 「あぁ〜…」

 となりの居間から、雪がめちゃくちゃ見てる。聞いたことないすげぇ心細い「あぁ」だ。

 「まってろ雪、にいちゃん、宇宙一美味いカレーつくるからな」

 「あぁあ…」

 …泣きそうな声だすなよ…


 大丈夫だ、なんといってもS &B カレーの王子様なんだから間違えない。


 にいちゃんは反省した。

 雪には身体にいいもんめちゃくちゃ食わせて頑丈な子に育てる。


 やっぱ子育ては食事からだからな。


 いまはチビ助(標準よりかなりチビなんだと思うけど標準がわからない)だけど、いつかオレを抜くんだ、雪!


 『よしいけっ!』

 「うす!」

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