ビーチグラス
きらきら
1
キラキラだ。
冬の朝の陽を弾いた海はキラキラで、ブルーともグリーンともつかない、かといってエメラルドグリーンとも違うなんともいえないブルーに透けている。
夏に飲む、あれだ、ソーダ水の色だ。
「多々戸ブルー、」
ユリさんが浜辺に落ちている小さな、おはじきみたいな透明の石を拾いあげて陽に透かす。
淡いソーダ色のかけらは陽を透かしてちょうど海の色に輝いている。
ガラスのなかに陽がたまるみたいに、そのなかがキラキラしている。
「これ、ビーチグラス、てゆうの」
「ビーチグラス…ガラス、すか? 石? 宝石?」
「ゴミ、」
「ゴミ?」
ユリさんの手のひらを覗き込む。
そこにある小さなかけらはどれもつるんと丸く、ガラスでできた石か、宝石みたいだ。
「瓶ゴミの破片なんだよ」
向こうでぐりぐり足首をまわしながらヤンくんが歯を見せる。なにをしていてもイケメンだ。「前世はきっとラムネ瓶だったに違いないよ」。
ヤンくんの向こうからカイトが、そんなこともしらねぇのか、みたいな目でこっちを見てくる、すげぇ目がうるさい。
「きあきあぁぁぁあ」
「そう、キラキラ」
雪がユリさんからもらったそれを小さな手のひらにのせて転がしている。見開いた丸い目がキラキラで、雪の目も宝石みたいだ。
「ゴミ、」
改めて覗き込む。
「でも、丸いし、」
「波に洗われて、」
「波に、」
「三十年、」
「三十年…」
「尖ってるとこがとれて、ゴミだったものが、」
ユリさんが柔らかく笑む。
「宝石になるんだって」
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