4

 *


 ぷー ぷー ぷー ぷー


 エアウェイブにのるだけのって、雪はポッキーを口に入れたまま寝落ちしてしまった。


 「かわいいかよ」


 寝顔を写メして部屋にお連れする。


 「みんな、雪が大好きだ」


 ノラ子にかまってもらって、ママやリンさんにチヤホヤされて、お汁粉お代わりして、雪はきょうもしあわせな顔でムニャムニャしている。


 みんな、雪が大好きだ。


 雪がテイクオフの練習をするから、おばちゃんはよろこんでキッズのウェットスーツをオーダーしていた。


 リンさんは浜辺においたじぶんのロングボードのノーズに、雪をのせてくれた。


 ノラ子は暴力的な雪のなでまわす攻撃に耐えてくれた。


 そしてにいちゃんは、雪のためにワイメアの波にのることを決めた。


 すごく誇らしい。


 オレの弟はさすが、みんなに愛されている。にいちゃんはだれかに好きになってもらったことなんか、一度だってないとゆうのに。

 好きになったことだってなかったのに。


 お袋がいなくなって、親父もいなくなって、


 『ことしの紅白歌合戦。テーマはLove & Peace!』

 「は、」


 ラブもピースもこの世にあるかよ。


 そんなものは必要ない、て、避けていて、そのじつ、きっとすごくほしかった。


 大切とか、好きだとか、愛してるだとか、どうやっても手に入らないその存在を認めるのがこわかった。


 雪の夜におきざりにされたチビはいともさんたんにそれをオレの手に握らせた。


 「にいちゃんも雪が、大好きだ」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る