4



 「おはようございます、小野さん、平井さん、パパさん」

 「はよっす」


 漁業道路から現れた青年ふたりも、オレたちを認めて楽しそうに駆けてくる。


 漁業道路のふたり…浅黒い長身爽やかイケメンくんと小麦色に日焼けした凶悪な目つきの半グレくんは、大人たちに頭を下げるとやっぱり知り合いの顔をしてオレの肩を叩いてきた。


 「きょうから? タカシくん」

 「え〜と、」

 「え、おばちゃん、なんでキッズのボードなの?」

 「あらぁ、ユキちゃん用だら」

 「あ、波乗りすんの、弟くんのほうなんだ?」

 イケメンくんが愉快そうに、屈んで雪の肩を抱く。

 「あい♪」

 雪、めちゃくちゃ得意げだ。


 パシャー パシャー


 パパはなにも聞こえないみたいにそのふたりを写メしている。


 「なんだ、おまえじゃないんだ。なに、おまえ、保護者?」

 半グレくんのうさんくさそうな視線が痛い。

 「え〜と…」


 「ユキちゃん、きょうはレンタルのウェットスーツね」

 「あい!」

 「ユキちゃんがのんならオレぁきょう有給つかわねぇとな」

 「ぼくが教えるよ」

 「あい♪」

 「え〜と、」




 「ヤンく〜ん!」

 「パパ〜、ユキちゃ〜ん!」

 「あ、ユリさん、…と、」

 「リンちゃん!」

 「リン、さん」

 ついでにユリさんと、となりにお目々ぱっちりのワンレン女子(なんだ、イケメンくんの彼女?)まで、県道から降る道を降りてくる。


 「ユリちゃん、」

 ユリさんを認めてやっと、パパが腰を上げる。

 「波乗りするのはユキちゃんだそうだ」

 「あら!」

 「あい!」


 にわかに、オノロアサーフにひとか集まりはじめていた。


 こんなにぎやかな朝は、生まれてはじめてだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る